下原ゼミ通信の最近のブログ記事


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)12月15日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.118
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅

12・15下原ゼミ

12月15日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.ゼミ誌刊行報告 出欠・連絡事項・その他

 2. 合同ゼミ発表会・擬似裁判
    「ナイフ投げ奇術師美人妻殺人疑惑事件」
     
 
12月の時空車窓 
 クリスマスのイルミネーション。正月の飾り物。12月の車窓は、いつの時代も華やかだ。しかし、なぜか、胸騒ぎする。というのもこの季節、喧騒の最中、よく大事件が勃発するのだ。2008年の今年は目下、不況の嵐が吹き荒れている。米国の津波をもろに受けて、これまでにない底冷えだという。派遣切り、大学生の内定取り消しのニュースが止まない。新しい内閣は、支持率急落。政局低迷、政権末期症状と囁かれている。車窓には、社会不安という大きな波が渦巻いて映っている。ジンクスか、過去の車窓を振り返ってみた。
 年末という季節、いったいどんな出来事があったのか。近いところでは、8年前の2000年に世田谷で起きた一家4人殺人事件。証拠となる遺留物は多いが、未だ解決に至っていない。日本もアメリカも好景気で沸いていた。「ついに犯人を突きとめた」など、いろんな推理ルポがでた。どれも泡沫だった。(編集室の推理は、犯人が食べたアイスクリームにカギあるかも)。遺留品が多いといえば、やはり日本が高度成長期で昭和元禄を謳歌していた頃、1968年12月10日、府中で起きた三億円盗難事件である。映画、テレビドラマ、出版物で注目された。が、こちらも解決はしていない。12月の車窓で、最大級の眺めといえば、67年前、今と同じアメリカも日本も大不況の只中にあるときに起きた出来事。1941(昭和16)年12月8日、日本は、どこで狂ったのか、兵力も資源も何十倍もあるアメリカ、イギリスに奇襲戦法で戦いを挑んだ。『高校日本史』(実教出版)には、このように書いてある。この日「航空母艦を主力とする日本海軍の機動部隊は、ハワイ諸島を奇襲し、真珠湾に停泊中のアメリカ太平洋艦隊に大損害をあたえた。また、同日、日本陸軍は、イギリスの植民地であるマライ半島北部に上陸を開始した。」このときの様子は、映画『トラ・トラ・トラ』(1970公開)で知ることもできる。不況を戦争で解決しょうとした悲劇だった。
 12月車窓で一番の見ものといえば、赤穂浪士討ち入りであ。ときは元禄14年(1702)、12月15日未明、播州・旧赤穂藩の浪士47人が、主君の仇を討つために本所の吉良邸を奇襲し、吉良上野介の首をとった。吉良側の死者は16名、重軽傷者約30名、浪士側は、軽傷者数名のみ。46名が自首したが、翌春、切腹した。1名は武士でなかった為、墓守となる。時空の師走車窓は劇的絵巻でもある。(編集室)



日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)12月8日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.117
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
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2008年、読書と創作の旅

12・8下原ゼミ

12月8日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.ゼミ誌作成報告 出欠・連絡事項・課題配布

 2.世界名作読み 詩編「空」ヴェルレーヌ
    
 3.課題・合同ゼミ発表稽古
 
  4.社会評・議論 「いじめ・暴力はなぜなくならないのか」新聞から
     
 
2008年の車窓・百鬼夜行 
 百鬼夜行という言葉がある。意味は岩波の国語辞典でみると「いろいろな姿をした鬼どもが、夜中に行列して歩くこと。また、多くの人が奇怪な行動や不正な行動を公然と行っている」とある。あと二十日余りで終わる2008年を振り返ると、なぜか、この言葉を彷彿する。
 まず、鬼と言っては失礼だが、今年の世相を映した「2008ユーキャン新語・流行語大賞」をみると、仮装した鬼たちの行列が思い浮かぶ。「アラフォー」「グ~ ! 」「上野の413球」「居酒屋タクシー」「蟹工船」「ゲリラ豪雨」「後期高齢者」「名ばかりの管理職」「埋蔵金」「あなたとは違うんです」これらの言葉に関連性があるかどうかは知らないが、今年を彩った仮装者たちの支離滅裂な言葉にそれをみる。もっとも、仮装行列の言葉なら害はない。人畜無害、オドロキとオモロイだけである。が、もう一つの意味「多くの人の奇怪な行動と不正な行動」は、どうサバ読んでもいただけない。しかし今年は、こちらに当てはまる人物が多発したようだ。まずは、この国の宰相である。名門中の名門。お金持ち中のお金持ち。お坊ちゃまで裸の王様というこのお方。マンガの読みすぎで漢字の読み違えはご愛嬌だが、問題発言やらホテルバー通いなど奇怪な行動が目立った。奇怪といえば、先般、この欄でも書いたが、34年ぶりに愛犬の仇を討ったという殺人者。だれでもよかった秋葉犯と同族の輩。近く精神鑑定を行うらしいが、まさに奇怪な犯罪行動であった。他にも奇怪な行動者は多々いる。これも、同通信で取り上げた人物。あれだけ世の中を騒がして、臆することなく7千万円もの退職金をもらった軍人もその1人だ。幕僚長というと、何だろう。昔で云うと元帥閣下か大将か ?! この大将、何を狂ったか懸賞論文にせっせと応募し、部下にも応募させていたようだ。確かに彼の怒りも理解できなくもない。格差が広がり、吸血鬼まがいの派遣会社が幅をきかす荒涼たる世の中。これも世襲の安泰と選挙にのみ汲々とする政治家の無能がなせる業である。ストーカーする裁判官、懸賞論文を書く軍人。ロシア文学ベストセラー。2008年、まさに奇々怪々の車窓だった。(編集室)


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)12月1日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.116
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅

12・1下原ゼミ

12月1日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.ゼミ誌作成報告 出欠・連絡事項・課題提出・課題配布・授業評価

 2.課題発表・「コルシカわが子射殺事件」裁判
    
 3.世界名作読み 詩編「空」、幕末江戸観察・シュリーマン『日本』
 
  4.社会評・議論 「いじめ・暴力はなぜなくならないのか」新聞から
     
 
今週の車窓・2008年象徴の事件 
 年の瀬が近くなると、なぜか大きな事件・出来事が起きるような気がする。オウムの犠牲になった坂本さん一家三人失踪事件、スマトラ沖大地震、世田谷一家四人惨殺事件などなどがそれである。今年も何か・・・と不安に思っていたら、やはり起きた。19日の新聞各紙は一面トップで「元厚生次官宅 連続テロ」(読売)、「元厚生次官宅 連続襲撃」(朝日)を大々的に報じた。テレビニュース・新聞によれば、18日午前10時20分ごろ、埼玉県で自宅玄関で夫婦が死んでいるのが発見された。夫妻の胸に刺し傷が数ヶ所あった。死亡推定時刻は前夕頃とみられている。同日夕方東京中野区で、主婦が宅配を装った男に襲われ胸などを刺され重傷を負った。殺害された夫婦の夫(66)と、後の事件で重傷を負った主婦の夫(76)が、元厚生事務次官で、共に年金改革に携ったことから、マスメディアは連続「年金テロ」と、大々的に書きたてた。テレビでは元警察関係者、元事件記者、弁護士、評論家、タレントらが、あれこれ推理していた。政治的背景か単独犯か、動機と犯人像に注目があつまった。
 ところが22日、事件は急転直下、終息した。犯人が自首したのである。なぜか所轄ではなく、警視庁本庁に。自分が犯人と名乗る46歳の中年男は、職業不詳。犯行理由は、30余年前、保健所に愛犬を処分されたので、その仇討ちと云う。なんとも奇妙な動機だった。
 今年は、各地で不可解な事件が起きた。秋葉原の「だれでもよかった」殺傷事件に代表されるが、今回の事件は、まさに今年を象徴する犯罪といえる。犯人は、小中高まで山口県の実家にいた。おとなしい勉強のできる子どもだったらしい。が、佐賀大学に行ってから変わりはじめた。とはいえ教授が就職を世話したというから...。しかし、何事も長く続かず、この10年は、実家とも連絡が途絶えていたという。アパート家賃は、きちんと払っていた。家で株をしていたらしい。パソコンに詳しい。そういえば、最近、事件を起こす人間は、出会い系、ブログ、メール、掲示板、などなどパソコンに造詣が深い。もしかしてインターネットのなかに犯罪に至らしめる「透明な存在」がいるのかも知れない。(編集室)
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.116―――――――― 2 ――――――――――――――

車窓雑記

早合点婆さんと若夫婦とその子供観察
 つるべ落としとはよく言ったものだ。が、井戸など見当たらない昨今では、死語になっているかもしれない。晩秋も終わりのこの季節、とにかく日の入りが早くなった。夕方、5時ともなれば、すっかり夜のとばりがおりてしまっている。暗い歩道をとぼとぼ歩いているのは学童保育からの帰りの子供たちか。さて、いきなりだが、団地8階に住む早合点婆さんは、パートから木枯らしに追いまくられてヨロヨロわが家に急いでいた。8階でエレベーターを下りるとわが家のドアは、すぐそこ。早合点婆さん、一目散にわが家を目指した。が、あとわずかというところでピタリと足をとめた。「はて? 」婆さんは、何か気になることがあったのか、もと来た廊下を後戻りした。814室のドアの下にランドセルを背負った女の子がじっとうずくまっていた。早合点婆さんはお節介婆さんでもある。
「あら、どうしたの」と、声かける。女の子はむすっとして口をひらかない。同じ階なので、母親と一緒のところをよくみかけるが、若い母親は、まったく挨拶をしない女。年寄は、眼中に入らないらしい。会社勤めの夫も、同然。朝、早く夜遅いので、めったに顔を合わせなかった。で、半年前、二人目の子供が生まれたこと以外、この家の事情は、まったくわからない。早合点婆さんは、想像する。たぶんこの子は、朝、学校行くときカギを忘れたんだ。それで、母親の帰りを待っているんだ、と。
 ところが、たずねてみると、そうではないらしい。女の子は、恐ろしげに首を振って小さな声でカギは、「いつも持っていない」と、いう。「お母さんは、いつ帰るの」と聞かれると「わからない」と首をふる。「いつから待っているの」「5時ころから」「もう、1時間もじゃない」早合点婆さん、大げさに驚いていった。「寒いから、わたしのところにきて、待ったら」女の子は、頑として動かない。「何年生」「三年生」「そうなの、じゃあがんばってね。そのうち帰ってくるんだね」早合点婆さんは、あきらめてわが家に帰った。15分ほどして、気になって早合点婆さん、外に出て様子を見に行く。女の子は、さっきと同じ姿勢で寒そうにじっとしていた。「まだ、帰ってこないの」。女の子は、黙ってうなずく。「どこに行ったかわからないの」「うん」「寒いから、うちにきて待ってなさい」「ここで待っています」女の子は、はっきりいった。「そうかい」早合点婆さん、あきらめてもどろうとした。そのときどこからか赤ん坊の泣き声。「あれ、赤ちゃんが泣いてるよ」814号室の中からのようだ。早合点婆さん、ドアポストに耳をあててみる。室内からギャアギャアと赤ん坊の泣き声。
「あらまあ、なかに赤ちゃんがいるのかい」「うん」女の子は泣きそうな顔でうなずく。「お母さんは、赤ちゃんをおいてどこにいったの」「わかんない」「近所に友達の家はあるの」「ない」「いつもあそんでいる子の家は」「知らない」女の子は一向に要領を得ない。その間、赤ん坊は部屋の中でずっと大声で泣き続けている。婆さんすっかりあわててしまった。赤ちゃんが大変だ。110番か、いや消防のレスキューかなど頭をめぐらせた。が、以前、早合点したことを思い出し、とりあえず女の子の学校に電話する。夕方6時、学校の返事、いま担任は面接中なので、あとからかけます。婆さん、いったん受話器をおいたが、この緊急非常時に、なんたる応対と、かけ直し、父親の携帯番号をきく。そして、すぐに父親に。父親はちょうど会社を退社したばかり。すぐ帰りますとの返事。婆さん、やっと安心したが、こんどはあれこれ母親のことを考える。なぜ、帰ってこないのか。事故か、失踪か、事件かなどなど。〒ポストから泣く赤ん坊を励ました。その最中、母親が長い黒髪をなびかせて帰ってきた。ここからが、早合点婆さんの憤慨もの。母親は、娘をみるなり「どうして、こなかったの」と、叱った。どんな事情かしらないが、娘とプールの前で待ち合わせていた、というのだ。いくら待ってもこないので、帰ってきたと話す。女の子は、すっかり忘れていたようだ。しばらくして若夫婦、赤ん坊、女の子が婆さんのところに謝りに来た。若い夫は、開口一番「すべての原因は、子のこのわがままからでたことです」と頭を下げた。早合点婆さんの憤怒、おさまりそうにない。


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)11月17日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.115
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅

11・17下原ゼミ

11月17日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.ゼミ誌作成報告 出欠・連絡事項・課題提出・課題配布

 2.課題発表・「ナイフ投げ奇術師美人妻変死事件」裁判
    
 3.世界名作読み 詩編「失恋」、幕末江戸観察・シュリーマン『日本』
 
  4.ゼミ中日・紙芝居 「赤ゴリラ編」残り
     
 
今週の車窓 
 晩秋の車窓は、なにかとあわただしい。ゆく秋の感傷に浸りたいところだが、時空列車は2008年の終点に向かって矢のごとく走り行く。目まぐるしく過ぎ行く車窓の景色。クリスマス飾りで彩られてはいるが、雑然・騒然として心やすらぐものがない。
 今週の気になる景色をいくつか拾ってみた。
・どうなる定額給付金「2次補正先送りへ 今国会延長せず」与党の合意事項は下記。
 1人あたり1万2千円(・66歳以上と18歳以下は8千円を加算し2万円、・所得制限
 は各市町村が判断、・その場合の下限は1800万円)朝日11・13
・だれでもよかった殺人事件、父親に仕事のことで叱られた腹いせに19歳が道を歩いてい
 た銀行員24歳を車ではねて死なす。千葉県香取市。今年多発、無差別殺人。
・大学生に大麻汚染。大学生のあいだで大麻汚染が広がっている。先の慶應につづいて、こ
 んどは都の西北の早稲田でも逮捕者が。入手先はインターネットでタネを購入して自宅で
 栽培。密輸入して。大学はすでに逮捕者を退学処分に。東京理科大生も。
 よいニュースは、あまりなかった。定額給付金は、唯一、明るい話題だが、なぜ、なんのためにと考えると、複雑な気持になる。日本の政治の貧困を思ってしまう。昔、竹下首相(あるロック歌手の祖父ということで知られている)が全国市町村に一律1億円をバラまいたことを思い出す。あれは、どんな相乗効果が、成果があったのだろう。不明である。
 木枯らし吹きはじめる、この季節は、なにかしら不穏なものを感じる。これもかれも以前、見た車窓の景色が頭に残って離れないからだ。あれは、たしか141年前。時は1867年11月15日だった。ところは京都市内。木枯らし吹く、寒い夜だった。時間は夜8時過ぎか。四条河原町にある醤油商近江屋の板戸をたたく数人の侍がいた。彼らは奉公人に手札をみせ誰かに面会を求めた。在宅とわかると、奉公人を刺殺し暗殺者に変身した。「こなくそ」の叫び。彼らが去ったあと二階には、死者1名と重傷者1名が。翌年、王政復古発布。


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)11月10日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.114
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
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2008年、読書と創作の旅

11・10下原ゼミ

11月10日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.出欠・連絡事項・課題提出・課題配布

 2.社会観察・「空自トップ更迭」事件、「振り込め詐欺」
    
 3.世界名作読み・詩編「秋」観察、家族観察『 にんじん』、江戸観察
 
  4.課題・『灰色の月』、『異邦人』、
     
 
車窓・今秋のニュース 
 今秋の車窓は、なんといってもアメリカ合衆国の大統領選挙である。4日深夜(日本時間5日昼)次期大統領が決まった。当選したのは、バラク・オバマ上院議員(47)。人種のるつぼといわれる米合衆国だが、アフリカ系は米国史上初。ハワイ州うまれでインドネシア育ち、父親はアフリカ、ケニヤ出身の留学生、母親は米国生まれの白人という。異色だが、米国も新世紀になって、ようやく多民族国家らしさがでてきた、といえる。
 米国は、外来種国家である。1492年10月12日。島の住人は、遠くの沖に見慣れぬ3隻の船を発見する。これまで見たこともない大きな船だった。小舟が近づいてきた。乗っている人間は、衣服は着ているが、髯面で、眼の色は青や茶、汗と垢だらけの大きな体からは腐臭を漂わせていた。まるで密林に棲む野獣のようであった。彼らは、大声で何ごとか叫んでいた。喜んでいるようにも見えた。遠い所から来たらしい。島の人たちは、新しい客人を迎えるために花や果物を持って浜に集まった。小舟から降りた猛獣のような人間は、遠慮会釈なくドカドカと浜に上がってきた。その瞬間、開闢以来つづいてきた島の調和と平和。悠久の自然の終わりだった。時のはじまり、外来種の増殖と繁栄のはじまりだった。
 歴史的には、船は同年8月3日ポルトガルのバロス港を出港したサンタ・マリア号、ビンタ号、ニーニャ号。総督は、スペイン、イザベル女王の命を受けたイタリア、ジェノヴァ出身のクリストファー・コロンブス(46)。約10週間に及ぶ新大陸発見の航海の末だった。彼は、感動して島を「聖なる救世主いう意味のサン・サルバドルと名づけた」。もっともコロンは、その島はインドの一部と思っていたらしい。1620年、島の奥の大陸アメリカに英国から信仰の自由を求めて百余人もの人たちが漂着した。彼らは希望を胸に植民地建設に着手した。1776年独立宣言をする。それから232年、車窓は、めまぐるしかった。戦争、内紛、恐慌、繁栄、差別といろんな風景が過ぎた。が、王様は最初の外来種から変わることがなかった。それが変わった。生まれも肌の色も。車窓が楽しみである。  (編集室)


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)10月27日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.113
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
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2008年、読書と創作の旅

10・27下原ゼミ

10月27日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.出欠・連絡事項・課題提出・課題配布

 2.課題・尾道幼女誘拐事件二審
    
 3.世界名作読み・家族観察『 にんじん』
 
  4.課題・『灰色の月』 & 時代観察(幕末の江戸)
     
 
車窓・外来種 
 テレビを見ていたら、西の方の町で外来種を退治するというニュースがあった。その外来種はアルゼンチンアリというハチ目アリ科に分類されるアリで、体長2.5mm、体高1.6mmと小さいが繁殖力、攻撃性が強く、たちまち蔓延するという。1993年に広島ではじめて発見された。輸入木材についてきたようだ。このアリはスピードも速く、土着のアリは短期間のうちに根絶された。人間を含む他生物の巣に侵入しその住人を襲う。世界の侵略的外来種ワースト100選定種である。天敵もいないし駆除しても根絶やしは難しそうだ。早晩、日本のアリは絶滅するだろう。アリばかりではない川には、ブラックバス、陸にはアライグマ、ヌートリア。22日の朝のテレビではウオーターレタスという水草繁殖被害の話題もあった。恐るべきは、外来種である。そんなことを思って見ていたら眠ってしまった。
 あるとき私は、彼らを連れて大銀河のはずれにある、この惑星にきた。水がある美しい星ということで調査にきたのだ。有機体成長の三原則は充分だった。酸素よし、水分よし、光りと温度よし。弱肉強食はあるが多くの生命体が関連してこの有機体惑星の調和を保っていた。幸い近くに似た星はない。このままにして置こう。私たちは、そう結論した。
 出発時に、警報がでた。私の手足となっていた有機体数体が不明。密林で迷ったか、逃亡したか。が、あまり心配しなかった。彼らでは、この惑星では生き残れない。彼らのひ弱さ、やがてくる氷河時代。病の微生物。彼らの生存確率は、0.00%と限りなく些少。この星にとって異物である彼らは必ずや自然に排除される。だが、私は不安を感じた。彼らの攻撃性、創造性、狡猾性を恐れた。杞憂だと誰かが笑った。「歯を磨き、ものを考える有機体は存在できない。この星は、多様な生命体から成り立つ一つの総合有機体だ」私は納得しこの星を去った。あるとき、私は彼らのことを思い出した。もしや、まだ生き延びている。そんな予感がした。私は、再び辺境のこの星にきた。大気汚染、温暖化。美しかった星は、汚れきっていた。原因は、あのとき不明になった有機体だった。星一面蔓延っていた。(編集室)


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)10月6日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.111
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅

10・6下原ゼミ

10月6日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.出欠・連絡事項・ゼミ誌原稿提出

 2.次回ゼミ課題・配布と説明
    
 3.世界名作読み・家族観察(家族事件から)
 
  4.課題発表(「尾道幼女誘拐事件公判・第一審)
     
 
車窓・大阪の個室ビデオ火災放火の闇 
  
 またしても雑居ビル火災で15人という大勢の犠牲者がでた。またしても、というのは、7年前、新宿歌舞伎町で44人もの死者をだした火災があったからだ。あのときは飲食関係の店ということで、半数近くが若い女性だったように記憶している。今回は個室ビデオ店だった。まだ身元は確認中だが、ほとんどが男性客のようである。狭い場所で大勢の人が死ぬ。都市型火災の恐ろしさもあるが、憎むべきは火をつけた犯人である。
 放火の動機は、秋葉原の通り魔殺人鬼と同じ「生きているのがいやになった」という身勝手な理由である。不幸にして事件に巻き込まれた人たち。個室ビデオ店というから、ビデオ目的の客もいただろうが、多くは、1500円という安さで一晩を過ごせる。その気軽さだったようだ。たまたま終電に乗り遅れた、職場が近いので休憩所がわりに利用していた。なかには「住所には別人」「親と音信普通」(朝日3日)という不明の人もいたが、殆どが毎日を一生懸命に生きていた人たちだったらしい。いったい、どんな人生を歩んだら、こんな凶行ができるのか。こんな人間になれるのか。新聞報道のなかから探ってみた。放火犯(46)の人生は、2000年頃までは順調のようだった。「大手電機メーカーに勤め、大阪府内の一戸建て住宅に妻と子ども2人、母親と5人で暮らしていた(読売)」という。「2001年に退職、その前後に離婚し、1000万円あった退職金もすぐに使い果たした」母親が亡くなってから一戸建ての自宅を売却、マンションを購入したが、それも昨年4月に手放し、犯行時はワンルームマンション住まい。事件1週間前には、知人に「2000円でいいから貸してほしい」と頼むほど困窮していたという。(読売)推測だが転落の原因はギャンブルか。近所の人の話だと、パンツ一つで歩きまわるなど奇行が目立っていたという。犯行時の所持金はゼロ。犯人は、後悔を口にしているという。発作的で無差別殺人の意思はなかったと弁解。その真意は。人間の闇は深い。失った命を思うと罪状を考えるのも虚しい限りだ。 (編集室)


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)10月6日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.111
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅

10・6下原ゼミ

10月6日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.出欠・連絡事項・ゼミ誌原稿提出

 2.次回ゼミ課題・配布と説明
    
 3.世界名作読み・家族観察(家族事件から)
 
  4.課題発表(「尾道幼女誘拐事件公判・第一審)
     
 
車窓・大阪の個室ビデオ火災放火の闇 
  
 またしても雑居ビル火災で15人という大勢の犠牲者がでた。またしても、というのは、7年前、新宿歌舞伎町で44人もの死者をだした火災があったからだ。あのときは飲食関係の店ということで、半数近くが若い女性だったように記憶している。今回は個室ビデオ店だった。まだ身元は確認中だが、ほとんどが男性客のようである。狭い場所で大勢の人が死ぬ。都市型火災の恐ろしさもあるが、憎むべきは火をつけた犯人である。
 放火の動機は、秋葉原の通り魔殺人鬼と同じ「生きているのがいやになった」という身勝手な理由である。不幸にして事件に巻き込まれた人たち。個室ビデオ店というから、ビデオ目的の客もいただろうが、多くは、1500円という安さで一晩を過ごせる。その気軽さだったようだ。たまたま終電に乗り遅れた、職場が近いので休憩所がわりに利用していた。なかには「住所には別人」「親と音信普通」(朝日3日)という不明の人もいたが、殆どが毎日を一生懸命に生きていた人たちだったらしい。いったい、どんな人生を歩んだら、こんな凶行ができるのか。こんな人間になれるのか。新聞報道のなかから探ってみた。放火犯(46)の人生は、2000年頃までは順調のようだった。「大手電機メーカーに勤め、大阪府内の一戸建て住宅に妻と子ども2人、母親と5人で暮らしていた(読売)」という。「2001年に退職、その前後に離婚し、1000万円あった退職金もすぐに使い果たした」母親が亡くなってから一戸建ての自宅を売却、マンションを購入したが、それも昨年4月に手放し、犯行時はワンルームマンション住まい。事件1週間前には、知人に「2000円でいいから貸してほしい」と頼むほど困窮していたという。(読売)推測だが転落の原因はギャンブルか。近所の人の話だと、パンツ一つで歩きまわるなど奇行が目立っていたという。犯行時の所持金はゼロ。犯人は、後悔を口にしているという。発作的で無差別殺人の意思はなかったと弁解。その真意は。人間の闇は深い。失った命を思うと罪状を考えるのも虚しい限りだ。 (編集室)


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)9月22日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.109
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅

9・22下原ゼミ

9月22日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.出欠・連絡事項・ゼミ誌原稿提出

 2.後期ゼミについて
    
 3.私の夏休み(どんな2008年の夏でしたか)
 
  4.テキスト読み・法廷作品「あなたなら、どんな判決か」
     
 
     車窓 2008年の夏に想う
 
 2008年の夏は、一口に言えば大変な夏だった。地球温暖化の危機を感じた連日の酷暑。ノアの大洪水を思わさせた局地への集中豪雨。東西冷戦ふたたびの緊張が甦ったロシア軍のグルジア侵攻。ワイダーの『地下水道』のような日本経済。年金、医療、教育、拉致、消費税どこまで行っても出口なし。まさに一寸先は闇だった永田町。「あなたとはちがうんです」謎の言葉(ギャグ)を残した福田首相の退陣。問題山積のままはじまった衆院選挙への狂想曲。米国からは大統領選挙の喧騒と大手企業の倒産。日本社会は、底なしの疑惑沼。毒ギョウザも未解決、うなぎ、牛肉産地疑惑。そして、事故米やカビ米食料転売。(謝罪か弁解か、立志伝社長たちの容姿、話し方が皆同じなのはなぜか?)お役人の職務怠慢天国。とどめは農水大臣のジタバタ辞任。場外では土俵外勝負が注目された大相撲と大混乱がつづいた。
 兎に角、今夏の車窓は、生活ものから自然災害ものなど、あらゆる分野の映画の一コマを観るようだった。が、その大半は、後味悪いものばかりだった。何か、爽やかな風を感じる心楽しめる車窓はなかったものか。あるとすればテレビ観戦した北京五輪か。いまも選手たちの活躍、観客の歓声が目蓋や耳に残っている。口パクや演出過剰はあったが、史上最多となる204の国・地域からの参加。競技も最多で300種目を越えた。いろんな問題があった。が、17日閉会のパラリンピック共に成功裏に終わった。まずはメデタシである。
 しかし、この世界の平和と人類の幸福を願う祭典も、現実は、理念とはほど遠いものだった。結局は、開催国の国家高揚と、各国のメダル数獲得合戦だった。「屁のつっぱりにもならんですよ」石井選手が笑いとばしてくれたが、成功の陰で考えるところが多かった五輪である。北朝鮮問題、チベット騒動、パキスタン、タイ、アフガンに青春を捧げた日本人青年の死。車窓を騒がしく暑苦しかった2008年の夏が過ぎてゆく。台風13号で涼しくなった夜。ヘミングウェイの『危険な夏』を思い出して書棚に探した。

日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)7月14日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.108
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008前期4/14 4/21 4/28 5/12 5/19 5/26 6/2 6/9 6/16 6/23 
6/30 7/14 
  
2008年、読書と創作の旅

7・14下原ゼミ

7月14日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.出欠・連絡事項・司会進行者指名・ゼミ誌作成報告

 2.課題提出原稿発表&前期回顧(出席率・課題原稿提出率など)
    
 3.なぜ「継娘殺人未遂事件」は無罪になったか

  4.紙芝居『少年王者』「生いたち篇」残り「赤ゴリラ篇」
     
 
     車窓 前期を振り返る
 今日は、7月14日、前期ゼミ最終日である。開講した4月14日が、昨日のことのように思える。16名の受講生、最近になってようやく名前と顔が一致した人もいる。欠席の多い人は、まだ怪しい。それなのに・・・・ただ歳月の流れる速さに驚くばかりである。
 時空を旅するゼミ2号の旅は、半行程を終えた。隊員16名全員、いまのところ1人の不明者、落伍者もでていない。旅程も、全員が揃わないことを除けば順調である。隊員たちのあいだも、出発時は、ゼミ誌委員も遠慮し合ってなかなか決まらない状態であったが、気がつけば、それぞれが自主的に役を引き受け、お互い融和協力意識も芽生えている。
 そんな雰囲気を察してか6月30日に所沢「笑笑」で懇親会が開かれた。出席者は、それぞれの都合もあって全体の三分の一強の6名と少なかったが、その分、より深い親交を結ぶことができた。宴席では、家族の話、学校の話、自分の目標や血液型の話など多彩であった。班長の小黒君から、昨年学業優秀でこのたび特待生に選出されたとの祝事報告もあった。前期を飾るめでたい出来事である。楽しい時は短い。皆「もう時間か」と、名残惜しそうだった。こんどはもっと多くの人にを合言葉に散会した。幹事さんご苦労様でした。
 順風満帆のゼミ。しかし、車窓は穏やかではなかった。8月の北京オリンピックに向けてアテネからスタートした聖火ランナー。各国での反対運動騒ぎに油を注いだ中国のチベット暴動。日本では、善光寺が辞退した。漸く鎮静化に向かった。しかし、一難去って、また一難。中国四川省でM7の大地震。なんと何万人もの人が亡くなったのである。そして、その復興・救援も遅々として進まぬうちに、こんどは日本の東北でM6の大地震。相次ぐ自然災害の恐ろしさ。しかし、それにも勝るとも劣らないのは、人間社会だ。暗澹とした事件、出来事がつづく。父殺し、子殺し、兄弟殺し。こんな家族から街にでれば、「誰でもいいから殺したかった」そんな輩が走り回っている。商品も料理も偽物だらけ。げに恐ろしや人間社会。後期の車窓は、楽しい、美しい風景であって欲しいと願う。      (編集室)

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