日本大学芸術学部文芸学科 2008年(平成20年)10月27日発行
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.113
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
編集発行人 下原敏彦
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8
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2008年、読書と創作の旅
10・27下原ゼミ
10月27日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2
1.出欠・連絡事項・課題提出・課題配布
2.課題・尾道幼女誘拐事件二審
3.世界名作読み・家族観察『 にんじん』
4.課題・『灰色の月』 & 時代観察(幕末の江戸)
車窓・外来種
テレビを見ていたら、西の方の町で外来種を退治するというニュースがあった。その外来種はアルゼンチンアリというハチ目アリ科に分類されるアリで、体長2.5mm、体高1.6mmと小さいが繁殖力、攻撃性が強く、たちまち蔓延するという。1993年に広島ではじめて発見された。輸入木材についてきたようだ。このアリはスピードも速く、土着のアリは短期間のうちに根絶された。人間を含む他生物の巣に侵入しその住人を襲う。世界の侵略的外来種ワースト100選定種である。天敵もいないし駆除しても根絶やしは難しそうだ。早晩、日本のアリは絶滅するだろう。アリばかりではない川には、ブラックバス、陸にはアライグマ、ヌートリア。22日の朝のテレビではウオーターレタスという水草繁殖被害の話題もあった。恐るべきは、外来種である。そんなことを思って見ていたら眠ってしまった。
あるとき私は、彼らを連れて大銀河のはずれにある、この惑星にきた。水がある美しい星ということで調査にきたのだ。有機体成長の三原則は充分だった。酸素よし、水分よし、光りと温度よし。弱肉強食はあるが多くの生命体が関連してこの有機体惑星の調和を保っていた。幸い近くに似た星はない。このままにして置こう。私たちは、そう結論した。
出発時に、警報がでた。私の手足となっていた有機体数体が不明。密林で迷ったか、逃亡したか。が、あまり心配しなかった。彼らでは、この惑星では生き残れない。彼らのひ弱さ、やがてくる氷河時代。病の微生物。彼らの生存確率は、0.00%と限りなく些少。この星にとって異物である彼らは必ずや自然に排除される。だが、私は不安を感じた。彼らの攻撃性、創造性、狡猾性を恐れた。杞憂だと誰かが笑った。「歯を磨き、ものを考える有機体は存在できない。この星は、多様な生命体から成り立つ一つの総合有機体だ」私は納得しこの星を去った。あるとき、私は彼らのことを思い出した。もしや、まだ生き延びている。そんな予感がした。私は、再び辺境のこの星にきた。大気汚染、温暖化。美しかった星は、汚れきっていた。原因は、あのとき不明になった有機体だった。星一面蔓延っていた。(編集室)