2008年11月アーカイブ


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)11月17日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.115
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅

11・17下原ゼミ

11月17日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.ゼミ誌作成報告 出欠・連絡事項・課題提出・課題配布

 2.課題発表・「ナイフ投げ奇術師美人妻変死事件」裁判
    
 3.世界名作読み 詩編「失恋」、幕末江戸観察・シュリーマン『日本』
 
  4.ゼミ中日・紙芝居 「赤ゴリラ編」残り
     
 
今週の車窓 
 晩秋の車窓は、なにかとあわただしい。ゆく秋の感傷に浸りたいところだが、時空列車は2008年の終点に向かって矢のごとく走り行く。目まぐるしく過ぎ行く車窓の景色。クリスマス飾りで彩られてはいるが、雑然・騒然として心やすらぐものがない。
 今週の気になる景色をいくつか拾ってみた。
・どうなる定額給付金「2次補正先送りへ 今国会延長せず」与党の合意事項は下記。
 1人あたり1万2千円(・66歳以上と18歳以下は8千円を加算し2万円、・所得制限
 は各市町村が判断、・その場合の下限は1800万円)朝日11・13
・だれでもよかった殺人事件、父親に仕事のことで叱られた腹いせに19歳が道を歩いてい
 た銀行員24歳を車ではねて死なす。千葉県香取市。今年多発、無差別殺人。
・大学生に大麻汚染。大学生のあいだで大麻汚染が広がっている。先の慶應につづいて、こ
 んどは都の西北の早稲田でも逮捕者が。入手先はインターネットでタネを購入して自宅で
 栽培。密輸入して。大学はすでに逮捕者を退学処分に。東京理科大生も。
 よいニュースは、あまりなかった。定額給付金は、唯一、明るい話題だが、なぜ、なんのためにと考えると、複雑な気持になる。日本の政治の貧困を思ってしまう。昔、竹下首相(あるロック歌手の祖父ということで知られている)が全国市町村に一律1億円をバラまいたことを思い出す。あれは、どんな相乗効果が、成果があったのだろう。不明である。
 木枯らし吹きはじめる、この季節は、なにかしら不穏なものを感じる。これもかれも以前、見た車窓の景色が頭に残って離れないからだ。あれは、たしか141年前。時は1867年11月15日だった。ところは京都市内。木枯らし吹く、寒い夜だった。時間は夜8時過ぎか。四条河原町にある醤油商近江屋の板戸をたたく数人の侍がいた。彼らは奉公人に手札をみせ誰かに面会を求めた。在宅とわかると、奉公人を刺殺し暗殺者に変身した。「こなくそ」の叫び。彼らが去ったあと二階には、死者1名と重傷者1名が。翌年、王政復古発布。


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)11月10日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.114
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅

11・10下原ゼミ

11月10日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.出欠・連絡事項・課題提出・課題配布

 2.社会観察・「空自トップ更迭」事件、「振り込め詐欺」
    
 3.世界名作読み・詩編「秋」観察、家族観察『 にんじん』、江戸観察
 
  4.課題・『灰色の月』、『異邦人』、
     
 
車窓・今秋のニュース 
 今秋の車窓は、なんといってもアメリカ合衆国の大統領選挙である。4日深夜(日本時間5日昼)次期大統領が決まった。当選したのは、バラク・オバマ上院議員(47)。人種のるつぼといわれる米合衆国だが、アフリカ系は米国史上初。ハワイ州うまれでインドネシア育ち、父親はアフリカ、ケニヤ出身の留学生、母親は米国生まれの白人という。異色だが、米国も新世紀になって、ようやく多民族国家らしさがでてきた、といえる。
 米国は、外来種国家である。1492年10月12日。島の住人は、遠くの沖に見慣れぬ3隻の船を発見する。これまで見たこともない大きな船だった。小舟が近づいてきた。乗っている人間は、衣服は着ているが、髯面で、眼の色は青や茶、汗と垢だらけの大きな体からは腐臭を漂わせていた。まるで密林に棲む野獣のようであった。彼らは、大声で何ごとか叫んでいた。喜んでいるようにも見えた。遠い所から来たらしい。島の人たちは、新しい客人を迎えるために花や果物を持って浜に集まった。小舟から降りた猛獣のような人間は、遠慮会釈なくドカドカと浜に上がってきた。その瞬間、開闢以来つづいてきた島の調和と平和。悠久の自然の終わりだった。時のはじまり、外来種の増殖と繁栄のはじまりだった。
 歴史的には、船は同年8月3日ポルトガルのバロス港を出港したサンタ・マリア号、ビンタ号、ニーニャ号。総督は、スペイン、イザベル女王の命を受けたイタリア、ジェノヴァ出身のクリストファー・コロンブス(46)。約10週間に及ぶ新大陸発見の航海の末だった。彼は、感動して島を「聖なる救世主いう意味のサン・サルバドルと名づけた」。もっともコロンは、その島はインドの一部と思っていたらしい。1620年、島の奥の大陸アメリカに英国から信仰の自由を求めて百余人もの人たちが漂着した。彼らは希望を胸に植民地建設に着手した。1776年独立宣言をする。それから232年、車窓は、めまぐるしかった。戦争、内紛、恐慌、繁栄、差別といろんな風景が過ぎた。が、王様は最初の外来種から変わることがなかった。それが変わった。生まれも肌の色も。車窓が楽しみである。  (編集室)


日本大学芸術学部文芸学科     2008年(平成20年)11月10日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.114
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2008後期9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/10 11/17 12/1 12/8 
12/15 1/19 1/26 
  
2008年、読書と創作の旅

11・10下原ゼミ

11月10日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室2

 1.出欠・連絡事項・課題提出・課題配布

 2.社会観察・「空自トップ更迭」事件、「振り込め詐欺」
    
 3.世界名作読み・詩編「秋」観察、家族観察『 にんじん』、江戸観察
 
  4.課題・『灰色の月』、『異邦人』、
     
 
車窓・今秋のニュース 
 今秋の車窓は、なんといってもアメリカ合衆国の大統領選挙である。4日深夜(日本時間5日昼)次期大統領が決まった。当選したのは、バラク・オバマ上院議員(47)。人種のるつぼといわれる米合衆国だが、アフリカ系は米国史上初。ハワイ州うまれでインドネシア育ち、父親はアフリカ、ケニヤ出身の留学生、母親は米国生まれの白人という。異色だが、米国も新世紀になって、ようやく多民族国家らしさがでてきた、といえる。
 米国は、外来種国家である。1492年10月12日。島の住人は、遠くの沖に見慣れぬ3隻の船を発見する。これまで見たこともない大きな船だった。小舟が近づいてきた。乗っている人間は、衣服は着ているが、髯面で、眼の色は青や茶、汗と垢だらけの大きな体からは腐臭を漂わせていた。まるで密林に棲む野獣のようであった。彼らは、大声で何ごとか叫んでいた。喜んでいるようにも見えた。遠い所から来たらしい。島の人たちは、新しい客人を迎えるために花や果物を持って浜に集まった。小舟から降りた猛獣のような人間は、遠慮会釈なくドカドカと浜に上がってきた。その瞬間、開闢以来つづいてきた島の調和と平和。悠久の自然の終わりだった。時のはじまり、外来種の増殖と繁栄のはじまりだった。
 歴史的には、船は同年8月3日ポルトガルのバロス港を出港したサンタ・マリア号、ビンタ号、ニーニャ号。総督は、スペイン、イザベル女王の命を受けたイタリア、ジェノヴァ出身のクリストファー・コロンブス(46)。約10週間に及ぶ新大陸発見の航海の末だった。彼は、感動して島を「聖なる救世主いう意味のサン・サルバドルと名づけた」。もっともコロンは、その島はインドの一部と思っていたらしい。1620年、島の奥の大陸アメリカに英国から信仰の自由を求めて百余人もの人たちが漂着した。彼らは希望を胸に植民地建設に着手した。1776年独立宣言をする。それから232年、車窓は、めまぐるしかった。戦争、内紛、恐慌、繁栄、差別といろんな風景が過ぎた。が、王様は最初の外来種から変わることがなかった。それが変わった。生まれも肌の色も。車窓が楽しみである。  (編集室)