文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信No198

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日本大学芸術学部文芸学科     2012年(平成24年)9月24日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.198
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              

編集発行人 下原敏彦

                              
9/24 10/1 10/15 10/22 10/29 11/12 11/19 11/26 12/3 12/10 
1/21 1/28
  
2012年、読書と創作の旅

9・24下原ゼミ

9月24日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ2教室

1. 出欠・配布  → ゼミ誌原稿提出と作成計画報告

2.  後期ゼミ説明 → テキストの脚本化と模擬、家族観察

3.  ゼミ合宿報告・私の夏休み報告

4.  サバイバル演習 → 後期ゼミ生き残りゲーム

後期ゼミの目標

1.ゼミ誌作成作業は全員で

 後期ゼミの第一目標は、ゼミ雑誌作成作業です。ゼミ誌に掲載される作品は大学2年目における授業成果です。2012年という年の記念碑でもあります。編集作業は人任せにするのではなく進んで参加してください。全員で協力して誇れるものを創りましょう。

2.授業、客観性を養う、テキスト脚本化に挑戦

前期は、「書くこと」「読むこと」の習慣化でした。欠席者は判断しようがありませんが、出席率7割以上の出席者に関しては、「書くこと」の習慣化は、ほぼ身についたように思います。「読むこと」についてもゼミ合宿マラソン朗読会で実証できました。
 後期は、テキスト志賀直哉の事件作品を、脚本化して疑似裁判に挑戦してみます。併せて、現在、社会問題になっている児童虐待やいじめについて考えます。実践としてはジュナールの『にんじん』をテキストにします。自分観察はひきつづき行います。

12月10日、3ゼミ合同発表会

 後期前半ゼミ終了日12月10日は、恒例の3ゼミ合同発表会を行います。山下ゼミ・清水ゼミ・下原ゼミです。発表内容は、2012年のゼミでやったこと。

ちなみに、ここ2、3年は、山下ゼミ=宮沢賢治童話の朗読と童画映像。清水ゼミ=ドストエフスキー研究報告。下原ゼミ=事件ものテキスト脚本化で模擬裁判を行った

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.198―――――――― 2 ―――――――――――――

ゼミ雑誌編集担当委員からのお知らせ(石川・後藤)

本日9月24日が、ゼミ誌原稿の締め切り日です !!

〈書式〉
件名を「下原ゼミ」とする。氏名・学生番号・個人作品タイトル・ゼミ誌のタイトル案を明記のこと。作品はワード添付とする。字は10.5ポイントとし、縦書き。

・添付ファイル  → 個人作品(小説)と車内観察作品

・個人作品  → 400字×26枚~30枚相当を上記の書式で。

・車内観察 → 600~700字又は、200字以内を2点。書式は上記。

・ゼミ誌タイトルについて
ゼミ誌は、テレビ番組の番組表をイメージした目次に。作品が集まった後、ジャンル(ドラマ・教育...等)を決める。そのため、タイトルはテレビを意識したものを。

原稿 9月24日(月)4時限目回収 締切厳守 !!

延長は、一切ありません。必ず提出してください。

刊行までのゼミ雑誌作成計画

編集委員担当 = 石川舞花  後藤啓介

編集委員   = 鞆津 吉岡  志村  古谷  矢代  根本  小妻  山野

ゼミ班長   = 梅津

 9月24日以降のゼミ雑誌作成手順は以下の通りです。

1. レイアウト 表紙 裏表紙 

2. 校正 自分の原稿は、自分でしっかりとみる。

3. 印刷会社を決める。わからなかったら出版編集室に相談する。

4. 印刷会社から見積もり料金を算出してもらう。「見積書」

5. 11月半ばまでに印刷会社に入稿。(芸祭があるので遅れないように)

6. 12月7日(金)刊行されたゼミ雑誌を出版編集室に提出。

7. 印刷会社からの「請求書」を出版編集室に提出する。 完了
                           
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ゼミ合宿    軽井沢・ゼミ合宿報告

8月1日(水)~8月2日(木)軽井沢・日本大学研修施設

2012年信州・軽井沢から → 1845年ロシア・ペテルブルグ白夜の街へ

参加した人は以下の4人の皆さんでした。時空探検隊の面々。

・古谷麻依さん ・志村成美さん ・鞆津正紀さん ・梅津瑞樹さん

人生の忘れられない思い出になった

 2012年度のゼミ生は、11名。このうち参加したのは4名、半数にも満たなかった。が、参加者は、このゼミ合宿で大きな収穫を得たと思う。たった二日の郊外授業。たった一冊の小説作品読破。(月面飛行士アームストロング船長の言葉を借りるなら)それは、ちっぽけな一歩だが、参加者の人生にとって忘れられない一夜となった。100冊の書物を読むのに匹敵する貴重な時間になった。睡魔、退屈、疲労、あらゆる困難を乗り越えての読破。そのときの感動。ドストエフスキー体験は、確実に参加者を変えた。そのように信じている。
 ちなみに、アメリカの作家ヘンリ・ミラーは、自分のドストエフスキー体験をこのように書いている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ある晩、私は、はじめてドストエフスキーを読んだ。その経験は、私の生涯で、もっとも重大なできごと、初恋よりも重大なできごとであった。それは私にとって意味のある最初の自発的、意識的な行為であった。それは世界の相貌を一変させた。私が最初に深い吐息をついて顔をあげた瞬間、実際に時計がとまっていたかどうか、それは知らない。だが、その一瞬、世界が停止したという事実だけは、はっきりと知っている。(『南回帰線』)

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.198―――――――― 4 ――――――――――――――

ドキュメント2012時空の旅

8月1日(水)晴天、朝から猛暑 

午前10:00 東京駅「銀の鈴」集合 古谷、志村、鞆津、梅津、下原ほぼ時間通りに集合。大きな荷物の人、荷物なしの人、一泊二日なので各人様々。特急券のない人は、特急券を買う。持っている人はホームで、自由席の列に並ぶ。
  10:40 長野新幹線「あさま」自由席、全員座れる。車中、おしゃべり、パソコン。

正午12:00 軽井沢着 日差しは厳しいが風は涼しかった。
   12:20 炎天下、北口周辺で食堂を探す。見つからず、戻って駅前の食堂に入る。5年前のゼミ合宿で入ったお店。一階は土産物店。当時と同じ店内。なめこうどん、カツ丼を注文。ゼミ、ゲームの話をしながら食べる。ゲームの会話は、下原は、カヤの外。店内、数人の客、ビールで宴会。研修終わっての時刻待ちか。
午後 1:30 日本大学研修施設に向かって出発。徒歩約20分だが、暑さのせいか記憶があいまいになる。梅津班長スマホで検索。間違っていないようだ。途中、コンビニで菓子を買う。アイスを食べながら国道を一直線に進む。
2:00 日本大学の標識ある。無事到着。施設は、夏休みに入ったばかりか、週半ばのせいか少なめ。高校生の研修が多かった。芸術学部は、下原ゼミのみ。  
      会議室を予約。各自の部屋に向かう。「古谷・志村」「梅津・鞆津」「下原」
   2:30 第一研修室に集合。ボトル持参。会場づくり。コの字に並べる。
        下原「マラソン読書会」について。読むことの習慣化の総仕上げ。テキストにドストエフスキーの処女作『貧しき人々』を選んだのは、この本の謎に挑戦してみたかったから。10頁、読んだらやめられなくなったという、伝説は、果たして真実か。自分への挑戦でもある。この作品は、読んだ人の心のどこかにある新しい扉を開けてくれます。テキスト配布。鞆津君、はじめて手紙小説と知る。マラソン朗読会スタート。梅津班長、司会進行。
   
マラソン朗読会スタート 「2012年から1845年へ、時空の旅」

午後 2:41 トップランナーの梅津班長は「では、登場人物の紹介からはじめます」と宣言
2012年の真夏の午後は一気に1845年5月の白夜に向かった。
2:42  梅津班長主要登場人物とV・S・オドエフスキー侯爵の言葉を読み終え、二番手に鞆津君を指名した。

午後 2:43 4月8日「だいじなだいじな私のワルワーラ・アレクセーヴナさま!」鞆津君の力強いスタートダッシュで19世紀半ばの世界に飛び込んでいった。
       4人のランナーはどうなるのか。バトンは志村さんに渡される。
   3:20 第1コースの最終ランナーは古谷さん。4月8日付けの手紙を読み終えたあと、タスキは再び梅津班長へ。いったいなんだ、この長たらしい手紙は
      4月9日、12日、5月20日、6月1日とつづく。
   4:46 6月11日書簡、志村さん
   4:49 古谷さん12日書簡
4:55 鞆津君6月20日書簡マカール → ワルワーラ宛
   4:59 梅津君6月21日書簡
   5:01 鞆津君6月22日書簡
   5:04  6月26日の手紙。古谷さん
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  5:18 梅津君、6月27日書簡 → 鞆津君
  5:22 志村さん → 古谷さん → 梅津班長 → 志村さん
  5:41 古谷さん7月7日書簡  
  5:44 梅津君7月8日書簡
  5:45 チャイム 夕飯のお知らせ
    約3時間で80頁読み終える。脱落者無し。全員、意欲的。物語に入っている。
夜 6:00 食堂で夕食(バイキング)食堂満席状態。どこからから小学生、中学生、高校生、大学生、一般ぞくぞく。
  7:00 お風呂 自由時間
  8:30 下原の部屋で親睦会、お茶とお菓子 
  10:00 第一研修室に集合
  10:10 古谷さん7月27日のワルワーラの手紙から 
10:15 鞆津君7月28日の読みに ジェーヴシキンの返事 
10:18 7月28日の手紙 志村さん
10:24 7月29日の手紙 鞆津君
10:25 8月1日の手紙 
10:35 8月2日の手紙
10:36 8月3日の手紙
10:42 8月4日の手紙 梅津班長
10:46 8月4日の手紙 鞆津君
10:54 8月5日の手紙 志村さん →  古谷さん
11:12 8月11日の手紙 梅津班長
11:16 8月14日
11:20 8月19日
11:36 8月21日
11:45 休憩
  00:00 P122 9月5日
00:02 9月9日
00:14 9月10日
00:16 9月11日
00:23 9月15日
00:34 9月18日
00:44 9月19日
00:47 9月23日
00:53 9月27日
00:59 9月27日の手紙 
01:00 9月28日
01:09 9月29日
01:30 9月30日の手紙
01:55 最終ランナーは梅津班長 怒涛の結末に向かってラストスパート
ゴール、マラソン朗読会、祝 全員完走

02:00 各自部屋に 就寝 朝まで話していた部屋もありました
朝   07:30 朝食(バイキング)セルフサービス
    8:00
10:00 記念撮影
文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.198―――――――― 6 ――――――――――――――

午前  10:30 珈琲店「旦念亭」反省会
    00:45 長野新幹線
午後  02:00 東京駅「たんたん」昼食
    02:42 解散

軽井沢駅近くの「旦念亭」で時空探検の疲れを癒す。

参加者独領直後アンケート

□読後感想 → 面白かった 面白かった
□感動体験 → あった   ややあった
□1845年の衝撃体験は真実か → 当時はそうだったかも  本当と思えた
□他の作品も読みたくなったか → 読みたくなった どちらとも
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課題報告(前期分)

前期提出された課題原稿のうち未掲載の作品です。

課題15.「原発について」   

石川舞花  →  わからない

【廃炉なら、エネルギー問題はどうするか】風力発電や太陽光発電などで補う。田舎の過疎地など使われていない土地を開発して発電施設を建設する。そうすれば、田舎の売れない土地を持っている人にも恩恵があるのでは。
 原子力や火力などではなく、安全でクリーンな発電方法でまかなえるよう徐々に準備していく必要がある。
【再稼働なら、安全はどう保つか】まず、正しい情報開示がなされるような対策を。その上で、対策をねっていく必要がある。
 いつでも冷却可能なように水源の確保をする。無人でも建屋内に入って調査が出来る機械を今より確実なものとする。原発付近の人々がいつでも避難できるような場所の確保と情報共有のシステム整備も必要かと思う。

□2030年0%を目指す、原発なくしてなんの文化生活。様々な提案。果たして未来は 

課題25.テキスト『出来事』感想
 
石川舞花        日常の中の非日常

電車の中で見た出来事を忠実に書いたような作品である。一見、日常のような書き方であるのに、明らかに非日常な、めったに出会わない光景を描いているのも面白い。つまらない日常の中で、いきなり起こる突拍子もない出来事は、退屈しのぎのいい材料にもなるようで皮肉だ。
子供が救助網に上手く乗って助かった、とすることで作品が、重苦しくならないのだと思う。無事でありさえすれば、ハプニングはそう悪いものではないのかもしれない。
車内観察は、いろいろな側面を持っているのだと感じる。『網走まで』や『三四郎』のような人間ドラマになったり、『出来事』のように日常の中の非日常になったりする。日常生活に密着した「車内」という空間であっても、多様な表現が出来、作品として成立するのだと改めて感じた。

吉岡未歩         読後、心地よい感想

 車内の乗客の気だるそうな雰囲気をよく読みとることができた。その電車の乗客はみんな暑さでだるそうにしているが、ある出来事があった後、みんなどこか生き生きした顔つきになっているという変化が、読後とても心地よいう感じを受けた。

古谷麻依         傍観者たらしめている

 この話で「私」は最初から最後まで傍観者なのだが、「へうきん者」こと白い蝶の介入により「私」を電車内で起こる出来事の傍観者たらしめている。まあ、その蝶も別段何したでもないのだが。
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課題27.「車内観察」(エッセイ、創作、ルポなど)

石川舞花        人生は一生勉強

 「生涯学習」という言葉をよく耳にする。これは勉強しつづけるということだが、その言葉を電車内でも感じることができる。
 電車の中で資格試験の勉強している人が何と多いことか。司法書士、税理士、社会福祉士、危険物取扱者などなど、テキストに赤シートをあてている人書き込みをしている人、ふせんと折り目で厚くなったテキストを繰っている人...。学生と変わらない光景だ。彼らもやはり受験生なのだ。資格を持っていないとやっていけないほど競争の激しい世の中なのだ、という確証をつきつけられたような気がして少し憂鬱になる。
 それだけではない。読書をしている人でも新書など社会情勢に関わる本を読んでいる人が結構いる。これも勉強の一つだろう。
 学生時代が終わったからといって勉強は終わりではない。むしろ、より切実な勉強が待っている。この先、私が生きて行く中で様々なものに出会い、様々なことを経験するだろう。そのことも社会勉強という勉強だ。人生は一生勉強。それを楽しめるようになりたい。

課題28.「自分の一日の記録」

石川舞花         町の小さなケーキ屋さん

 自宅から駅に向かう途中にケーキ屋さんがある。店舗と住居が一体化したごく小さな個人商店だ。私が幼稚園児だった頃からあった。店名の「プチガトー久美」が「くみ」ではなく「ひさみ」だと知ったのは最近のことだ。定期的に家のポストにチラシが入っていて、セールの日には列ができる日もある。それが当たり前の光景だった。
 ある日、店の前に貼り紙が貼ってある。いつも通りセール予告かと思い立ち止った。
【家人入院のため、父の日セールを延期いたします】とある。顔見知りなわけではないが妙に気になった。現在もその貼り紙は貼られたままだ。
 町の小さなケーキ屋さんは、少なくなってきているように思う。だからこそ、また見慣れた手書きのセールチラシを見たいと思っている。

課題29.「社会観察」事件・政治・芸能など

石川舞花     日本の社会が通り魔を生んでいる・・・

 通り魔事件のニュースをよく見る。「通り魔」は無差別殺人を殺すという意味でとても恐い。「誰でもよかった」と言われては、死んだ本人も遺族も浮かばれないだろう。
 「誰でもいいから誰かを殺す」ことや「むしゃくしゃして殺した」ということが多いというのは異常な事態だ。人々の心がすさんできていて、現在の状況を受け入れられない人が増えているのだと思う。これは不況で経済的にどうというのではなくて人々の心の問題だ。そして、人々の心は社会が作り出している。日本の社会が通り魔の心を生んでいるのかも知れない。満足した日常を送っている人は、多くないと思う。誰しも多かれ少なかれ不満を抱えているだろう。それと向き合い折り合いをつけながら生きて行く。それが平和な幸せであると思う。平和な幸せを大切にする心を忘れないで持ちつづけていたいものだ。


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課題30.「車内観察」(エッセイ、創作、ルポなど)

石川舞花       持ち物は持ち主の性格を表す

 持ち物には、持ち主の性格が投影されていると思う。特に女性のかばんには、その人の趣味が色濃く表れる。しかし、だからといって皆がバラバラのかばんを持っているというと、そうとも言い切れない。やはり流行がある。
 よく見かけるのは「コーチ」のバッグだ。若い女性を中心に絶大な人気を誇っていると見え、持っている人が多い。シャネルやルイヴィトンに比べると安価であることも人気の一つかも知れない。何となく安っぽくて品のない感じがして私は好きになれない。
 もう一つよく見かけるメーカーのかばんがある。「キャスキッドソン」だ。こちらは私も愛用しており、3つほど持っている。値段も手ごろなので若い人が多く持っている。花柄や水玉など模様が多彩なので持つ人を選ばないのか年齢層は幅広い。
 このように、人の持ち物は、その人の好みと流行とが混ざり合って決まっている。流行を追い過ぎても虚しいし、流行から取り残されても悲しい。自分の立場や場の状況にも合わせなければならない。色々な問題と向き合って折り合いをつけて決める。その折り合いのつけ方に性格がでるのだ。だから、持物は持ち主の性格を表すと言われるのではないだろうか。


鞆津正紀         終わりのない一日

 一日一日が雑なのは、日々がつまらないからだ。明日世界が終わることは考えていない。今日も電車の関は空いてないけど気にならない。ドアの脇にもたれて、窓の向こうの車内を見つめた。翌日がくることを確信しているから、タイホはされたくない。電車の中で女性と目が合ったら次の瞬間にはチカンの汚名を頭からすっぽりかぶっているかも知れない。だったら何もない日々の方が絶対にマシだ。だから目が合わないようガラスの反射で人を見ていた。隣でドアにもたれる女性を盗み見る。手元のDSにはぷよぷよが映っている。2画面のぷよぷよ・・・・。かったことはない。頑張れお姉さん。おちてくるぷよぷよに負けるな。電車を降りて、何もない一日が終わる。僕らは必死で土曜日を目指す。こうして4回くり返すと一カ月だっている。気づけば一年が終わる。そして一年が始まる。一週間が、一日が出口はどこにあるんだろう。終わりはいつだろう。それがないから土曜日を目指しているのかも知れない。

梅津瑞樹      車外観察・決意

休日のH駅のホームは、いつにも増して閑散としていた。ホームのちょうど中ほどあたりだろうか。老人と、その後ろにくっつくようにして一人の青年が電車を待っていた。
他にも人の並んでいない場所はあるのに、何故この青年はわざわざここに並ぶのだろうか、と幾人かの通行人は少しばかり訝しみもしたが、別段、そこまで気に止めるでもなく、ただ横を通りぬけていった。この時、青年はあるものと戦っていた。自身の背徳的かつそれでいてどこか魅力的な欲望をおさえきれずにいたのだ。それはちょつとしたことで成し遂げられるのであったが、青年にはその一歩がとても重く、今だ実行できずにいた。そうこうしているうちに電車がはるか線路のむこうに姿を現した。ホームに駅長の声がひびく。
青年は意を決した。

文芸研究Ⅱ下原ゼミNo・198―――――――― 10――――――――――――――――

課題31.「自分の一日の記録」

梅津瑞樹          母来たる

 朝、目を覚まし、枕元の携帯電話に目をやると一通のメールが届けられていた。差出人はどうやら実家の母親らしく今から3時間後に行くので片づけをしておけ、といった内容のものだった。霧でもかかったかのように冴えない視界でそれを読みとったあとあわてて顔を洗い、朝食もとらずに掃除をはじめたが、ふと腹立たしくなり、ベランダに出て煙草をふかすことにした。
 その後、母にこっぴどく叱られたことはいうまでもない。

石川舞花         ノラ猫の死

 朝、最寄駅まで自転車を走らせていると、猫が歩いているのが見えた。ノラだと思われる三毛猫だ。猫は私の先をのんびりと歩いている。暑くて疲れ気味なのかもしれない。猫が曲がり角にさしかかった時、角から車が走って来た。「危ない ! 」と思う間もなく猫は轢かれてしまった。
 このような状況を見るのは意外と多い。勿論、猫は悪くない。運転手が一概に悪いとも言えないような気がする。見てしまった側もひいてしまった側もその日一日が滅入る。
 朝からこういう出来事を見た。その日は何か良くないことが起こるような気がした。猫を置き去りにして駅に急ぐ自分自身にも悲しくなる。家に帰った後、飼っている猫2匹がゴロゴロしていることにホッとした。

課題32.人生相談「息子が大学を辞め料理人に」へのアドバイス

鞆津正紀     大学と料理の勉強、両立できる環境を・・・

 〈母親に対するアドバイス〉やりたいことを応援したいと思う気持ちがあるなら、それを大事にされてはどうでしょう。子のやりたい事を応援出来ない親も多いのです。おっしゃる通り大学での経験も大事ですから、大学に行きながらでも何かしら料理の勉強が出来る環境を探してあげるのはどうでしょう。意義のない学生生活に打ちこめないお子さんの気持ちも、兒に経験を与えたいあなたの気持ちもよくわかります。大学生活中は将来の準備がはかどりますから、お子さんの夢を応援し大学生活も支える、これが理解ある親の一つの在り方ではないでしょうか。

石川舞花     まずは目の前ののことに向き合うこと

 やりたいことがあるのは良いことだと思います。ただ、それはきちんと続いた場合の話です。どんな困難でも乗り越える覚悟があるならば人生はいつからでもやり直しが出来るでしょう。
 大学に入学したのだから卒業する、というのは大切なことだと思います。大学をきちんと卒業して、それからでも料理の道に進むと決めたのならば、突き進んで欲しいです。まずは目の前のことに向き合うことではないでしょうか。迷いや悩みが多いのが大学生です。厳しくすることで見えてくるものもあるかもしれません。本当にやりたいという気持ちが見えたら、その時は、無条件で応援してあげてください。

―――――――――――――――――― 11 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.198

梅津瑞樹         応援して伸ばしてあげてください

 僕自身、やりたいことがぶれ続けているので、とてもその息子さんがうらやましいです。
 目的をもつということの難しさを知っている身からすれば応援してもっと伸ばしてあげるべきだと思ってしまいます。

後期ゼミ開始  観察から創作 調書作成 → 脚本化 → 模擬裁判

テキストは、志賀直哉作品『兒を盗む話』『剃刀』『范の犯罪』
(合い間に、児童虐待事件が後を絶たないことから家族観察作品も取り上げる)
 テキスト作品をはじめる前に、実際に起きた事件を考えてみましょう。
夏休み中に、こんな犯罪事件がありました。容疑者は、ゼミのみなさんと同じ頃の年齢です。なぜ、事件を起こしたのか、容疑者の気持ちになって調書を書いてください。
 9月3日と4日に起きた誘拐事件です。早急に解決してよかったです。


文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.198―――――――― 12 ――――――――――――――

【観察】 周辺観察 → テキスト『濠端の住まい』志賀直哉
       家族観察 → テキスト『にんじん』ジュナール

家族観察、志賀直哉は『暗夜行路』『和解』などで家族観察作品があります。が、ゼミでは世界文学から『にんじん』をとりあげます。

後期課題1. 『兒を盗む話』の前に。11頁どちらの事件でもいいです。

新聞記事から、自分が容疑者になったつもりで調書を書いてください。

演習サバイバル

土壌館ニュース

 先日、民生委員・児童委員の研修会に参加した。テーマは「認知症の人とその家族を理解することを通じて、コミュニケ―ション技術を学ぶ」でした。午後の演習のなかに以下の『サバイバルゲーム』があった。面白い企画と思ったのでとりあげてみました。中高年者と、ゼミの皆さんでは、優先順位が違うのか ? 手元にある必要事物の優先順位をつけてみましょう。

サバイバル 生き残るにための若者の優先順位は ? 発表と説明
【状況】標高1500㍍の山で遭難した。季節は9月末、時刻は3時。ケータイは通じない。交通、通信の手段は全くない。食料は一日分程度。近くに谷川がある。幸い身体損傷はない。しかし、救助が来るかはわからない。こんな中、あなたは、一人だったら、どうしますか。また、数人のパーティだったら。手元には下記のものがあります。自分一人の場合と、数人の場合の優先順位をつけてください。理由を説明する。

 持物 → 多目的ナイフ    毛布1枚  古いタイヤ  使い捨てライター  
2リットルの灯油  ロープ10メートル     ゴミ用ポリ袋5枚
木綿のシーツ 以上8点です。

    自分一人の場合の優先順位        数人以上のときの順位


お知らせ

ドストエーフスキイ全作品を読む会「読書会」
10月27日(土)開催 午後2時東京芸術劇場小会7 作品『白夜』

・・・・・・・・・・・・・編集室便り・・・・・・・・・・・・・・

○課題原稿、メールでも可 下記アドレス

□住所〒274-0825 船橋市前原西6-1-12-816 下原方『下原ゼミ通信』編集室
  メール: TEL・FAX:047-475-1582  toshihiko@shimohara.net


後期課題1. 「女子児童誘拐犯人の調書」  名前

 犯罪行為をしたときの自分の胸中
                                


                              


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