文芸研究Ⅱ 下原ゼミ通信No.155

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日本大学芸術学部文芸学科     2010年(平成22年)10月25日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.155
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
9/27 10/18 10/25 11/8 11/15 11/22 11/29 12/6 12/13 1/17 1/24 
  
2010年、読書と創作の旅

後期ゼミは、社会・家族観察を中心に
10・25ゼミ

10月25日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。ゼミ2教室

1. ゼミ雑誌作成経過・編集作業報告(竹下晃誠さん)
2. 車内観察・『灰色の月』車内作品テキスト最終作品
  3. 家族観察・テキスト読み「にんじん」
  4. 社会観察・「事件」裁判員裁判初公判の先を考える
      

10・18ゼミ報告

2010年の旅最低参加率、記録更新中
 今年は、とりわけ気候に関しては記録的という言葉が多かった。ありがたくないことだが、「2010年の読書と創作の旅」も、これが当てはまりそうだ。10月18日は、ゼミ雑誌の原稿締切日であった。先の9月27日を延期しての締切日である。が、この日の参加者は、日芸祭が近づいたせいもあるのか、30%に満たなかった。前回同様である。まことに残念ではあるが、これで2010年の旅は、目下最低参加率の記録を更新中ということになる。
この現象は、下原ゼミだけではないようだ。他ゼミの先生方も今年は「用事ができたから」「バイトがあるから」帰ります。休みます。という学生が多くなっているとこぼす。毎日の第Ⅰ優先は、なにかはわからないが、ゼミ以外にあるのは確かである。
この日の参加者、重藤はるかさん、立川陸生さん、竹下晃誠さん。
竹下晃誠君、孤軍奮闘で始動
 ゼミ誌作成会議は、編集長と編集委員を兼務した竹下晃誠君が、議長を務めた。タイトルと締め切りが21日と決まった。編集が危機的状況にあるゼミ誌だが、一歩前進した。
この日、原稿を提出したのは、早退した越智さん、出席の藤重さんの二人。表紙デザインをどうするか。業者に委託か自分たちで考案するかは、保留。夜、伊藤果南さんから、18日の締切日に提出できなかった詫びと、提出予定の報告があった。
【料理人になりたいから中退するといという大学2年生の母親の相談】
同じ、大学2年生ということで、参加者の意見は厳しかった。「好きにさせれば」「独立させた方が」と、突き放した回答。この対応、「いまのままでは、閉じこもりになってしまう」という母親の心配と不安を解消することができたかは、疑問。
家族観察『にんじん』の読み
世界文学線上にある、ジュナールの『にんじん』だが、あまり知られてはいないようだ。読んだことのある人はいなかった。虐待問題を考えながら、3作品「めんどり」「犬」「しゃこ」などを読む。母親に問題があるとの感想一致。

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.155―――――――― 2 ―――――――――――――

車窓雑記      嘉納治五郎生誕150周年に想う

今年は、嘉納治五郎生誕150周年に当たる。が、嘉納治五郎と聞いて、はたしてどれだけの人が、その人物像や功績を思い浮かべることができるか。治五郎には、いくつもの功績がある。そのうち一番知られている功績は、柔道の考案と普及。これについてみれば、新しいルールで日本選手が活躍した先の世界柔道、谷亮子さんの柔道引退騒動。今年は、けっこう柔道の話題が多かった。が、生誕150周年は、今日まであまり語られていない。
そんななかで、他にあるかどうかは知らないが筑波大学で、その功績をパンフレッドにして発行している。目についたので紹介したい。
「生誕150周年 嘉納治五郎KANO Jigoro」筑波大学2010.3
(なお、項目以外は、筆者の加筆、削除、抜粋がある。)

1.柔道による人間教育
柔術に科学的・合理的考えを取り入れ、日本古来の武術という、武芸者という特定の人たちの実技を、国民、老若男女、だれでもが習える武術とした。スポーツと違うのは、その武術に「精力善用」「自他共栄」の理念をもたせ、事実を観察する科学的な態度、正義感、公正と謙虚さを身につけるようにした。また、修行で得たことを社会生活に生かしていくということも目的とした。(もっとも、この理念は、戦前は軍部に利用されてしまった)
この理念ある格闘技は、日本人より、西欧人に好まれ、いまや心身を鍛えるスポーツとして、世界200カ国以上に広まり一千万人近い競技者を有す。ロシアのプーチン首相は「もし柔道と出会わなかったら、私はただの不良だった」と、公言してはばからない。

2.日本の学校教育の充実
 嘉納治五郎の功績は、日本人にとっては、柔道より、学校教育の確立。こちらの方が、大きいとみる。治五郎は、高等師範学校の校長になると教育者育成のために、軍隊的な学生寮の規則を改正して学生に自由な気風を与えるとともに、課外活動やボート、野球など西洋スポーツの導入、留学生の受け入れなど画期的教育改革を行った。高等師範学校を文理科大学に昇格させる基礎をつくるなどして教育者を育成した。この結果、近代日本の中等教育や師範教育は充実した。おかげで東京教育大学や筑波大学は、高い資質を備えた教育者や研究者を輩出できた。ほかに高等女学校の各府県設置やローマ字教育の推進にも尽力した。しかし、なぜか、これらの功績はほとんど知られていない。

3.留学生の受け入れ
 近代日本において、最初に留学生を受け入れた教育者。1882年に私塾「弘文館」、1899年以降高等師範にも受け入れ。巣立った中国人留学生は8000人になる。作家の魯迅、田漢、毛沢東の師となる、楊昌済も出身者である。
 ほかに教育者としては、小泉八雲(ラフカデオ・ハーン)や夏目漱石の上司として、彼らに影響を与えた。小泉八雲は、海外に最初に柔道を紹介した。漱石を教師に採用し、後に迷える彼を小説家への道に進ませたのも嘉納治五郎では。小説『坊っちゃん』は漱石自身と嘉納治五郎がモデルかと思う。「山嵐」は、西郷四郎からという説もある。

 以上のように、近代日本において、嘉納治五郎の功績は計り知れないものがある。だが、そのことは、知る人ぞのみである。なぜか、戦前、日本を戦争へ戦争へと駆り立てた帝国日本の軍部や為政者は、嘉納が思想家、教育者として成ることを恐れた。彼を一、柔道家と矮小化することで、嘉納の理念のひろがりを防いだのだ。そのように想像している。
 嘉納治五郎の晩年は、悪化する国際情勢のなかで日本に平和をと世界を東奔西走した。1932年第12回東京オリンピック開催を決定させた。治五郎の秘技が、軍部から1本とった。が、狂った日本軍部にルールはなかった。摩主の手を...治五郎、船上にて死す。(編集室)
―――――――――――――――――― 3 ――――― 文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.155
 2010年、読書と創作の旅 10月18日ゼミ報告

第4回ゼミ雑誌作成編集会議報告

 10月18日、竹下晃誠議長は、第4回ゼミ誌作成会議を緊急招集した。この日の参加者は立川陸夫、藤重はるかさんの3名。(越智さんは、原稿提出の委任状)
ゼミ誌作成は、見積書提出など、期限が迫っているため、決議はとらず、出席者の意向を優先、決定事項とした。決定事項は、以下の通りです。

◎ 原稿、最終締め切り  → 10月21日 ! 本当に最終です。

◎ タイトル  →  『そして誰もいなくなった』

             レイアウト = 竹下君

◎ 表紙絵デザイン → 業者に任せるか、できる人(目下、できる人はいない)


【今後の制作手順】
1. 10月21日  → ゼミ誌原稿を回収。
2. 10月中旬までに → 内定の印刷会社を決め②「見積書」をもらう。
3. 11月8日 → 「見積書」の提出。印刷会社と相談しながらゼミ雑誌作成。
4. 12月 → 14日までにゼミ誌提出、③「請求書」提出

注意事項!!
◎ 印刷会社を決めるに際して
「はじめての業者は避ける。わからないときは、編集出版局に相談する」

ゼミ誌編集委員
 ゼミ雑誌編集委員は、次の11名の皆さんです。協力し合って2年ゼミの記念になるものをつくりましょう。(順不同)

・越智美和さん ・阿井大和さん ・竹下晃誠さん ・藤重はるかさん ・後藤大喜さん
・高口直人さん ・塚本笑理さん ・立川陸生さん ・伊藤光英さん ・重野武尊さん
・伊藤果南さん   ◎ 編集長・伊藤・竹下 ○ 副編集長・塚本

2010年、読書と創作の旅評価について

この旅の評価は、以下を基本とします。

出席日数 + 課題提出 + α + ゼミ誌原稿 = 100~60点(S,A,B,C)

課題提出は、まだ受付けます。書くことの日常化の為にも、どんどん書いて提出ください。
書くことは、自分の腕もあがり点数もよくなる。一挙両得です。

まだ、間に合います。課題をどんどん提出してください

課題は、「車内観察」「自分の一日観察」「社会観察」など。


文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.155 ―――――――― 4 ―――――――――――――――

10・25プログラム

1. ゼミ雑誌原稿提出結果など現状報告 → 竹下晃誠さん

表紙絵、本文レイアウトなどについて、印刷会社

2. 車内観察・最終テキスト「灰色の月」を読み

感想、自分だったらどうするか

3. 家族観察・テキスト「にんじん」読み
 
今回は、「失礼ながら」「尿瓶」「うさぎ」を読みます。 感想

4. 社会観察・裁判員裁判「耳かき嬢とその祖母殺人事件」初公判
  
10月19日初公判、11月1日に結審予定。先取りで考えてみる。

休講のお知らせ

 11月8日と15日の下原ゼミは、休講します。担当講師の下原が手術入院するためです。数年前から両足にシビレがあり、はじめは足の裏だけだったが、徐々に上にあがってきた。これまで、その症状は、柔道で痛めた後遺症、老化現象の加齢からくるもの、他にメタボや血液硬化症、つまり生活習慣病、そんな類と思っていた。
しかし、この夏、そのシビレ範囲が膝上まであがってきたことで、近所の内科医からMRI検査をすすめられた。その結果、胸椎靭帯骨化症という難病だったことが判明した。
 脊椎のなかの靭帯が骨に変化し、それが神経に触れている。医師の説明だった。なぜ、そうなるのか現代医学では、まだ不明とのことで、特定疾患に指定されているという。このまま進行すれば、最悪で歩けなくなる恐れがあるとの診断。
 そんなことで止むなく11月4日に手術入院することになった。そのことで

11月8日(月)、15日(月)のゼミは、お休みとします。

補講は、課題・レポート提出とします。

レポートは、以下の課題(2点以上)

課題1. ガンプラ青年の屈折心理を描く 参考テキスト『兒を盗む話』

課題2. 彼は、なぜ死んだのか 参考テキスト「空中ブランコに乗った大胆な青年

課題3. 「ともだちとは何か」について書く  

課題4.  ある特高検事の手記 参考テキスト モーパッサン「狂人」

課題5. 「太陽がまぶしかったから殺人事件」『異邦人』をよく読んで告訴・弁護を書く。

※ 「車内観察」「普通の一日」「社会観察」でもよい。
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車内観察・テキスト最終作品
テキスト・灰色の月
志賀直哉

 東京駅の屋根のなくなった歩廊に立っていると、風はなかったが、冷え冷えとし、着て来た一重外套で丁度よかった。連れの二人は先に来た上野まわりに乗り、あとは一人、品川まわりを待った。
 薄曇りのした空から灰色の月が日本橋側の焼跡をぼんやり照らしていた。月は十日位か、低くそれに何故か近く見えた。八時半頃だが、人が少なく、広い歩廊が一層広く感じられた。
 遠く電車のヘッドライトが見え、暫くすると不意に近づいて来た。車内はそれ程込んでいず、私は反対側の入口近くに腰かける事が出来た。右に五十近いもんぺ姿の女がいた。左には少年工と思われる十七八歳の子供が私の方を背にし、座席の端の袖板がないので、入口の方へ真横を向いて腰かけていた。その子供の顔は入って来た時、一寸見たが、眼をつぶり、口はだらしなく開けたまま、上体を前後に大きくゆすっていた。それはゆすっているのではなく、身体が前に倒れる、それを起こす、又倒れる、それを繰返しているのだ。居眠りにしては連続的なのが不気味に感じられた。私は不自然でない程度に子供との間を空けて腰かけていた。有楽町、新橋では大分込んで来た。買出しの帰りらしい人も何人かいた。二十五六の血色のいい丸顔の若者が背負って来た特別大きなリックサックを少年工の横に置き、腰掛に着けて、それにまたぐようにして立っていた。その後ろから、これもリックサックを背負った四十位の男が人に押されながら、前の若者を覗くようにして、
「載せてもかまいませんか」と云い、返事を待たず、背中の荷を下ろしにかかった。
「待って下さい。載せられると困るものがあるんです」若者は自分の荷を庇うようにして男の方へ振り返った。
「そうですか、済みませんでした」男は一寸網棚を見上げたが、載せられそうにないので、狭い所で身体をひねり、それを又背負ってしまった。
 若者は気の毒に思ったらしく、私と少年工の間に荷を半分かけて置こうと云ったが、
「いいんですよ。そんなに重くないんですよ。邪魔になるからね。おろそうと思ったが、いいんですよ」そう云って男は軽く頭を下げた。見ていて、私は気持よく思った。一頃とは人の気持も大分変わってきたと思った。
 浜松町、それから品川に来て、降りる人もあったが、乗る人の方が多かった。少年工はその中でも依然身体を大きくゆすっていた。
「まあ、なんて面をしてやがんだ」という声がした。それを云ったのは会社員というような四、五人の一人だった。連れの皆も一緒に笑いだした。私からは少年工の顔は見えなかった
が、会社員の云いかたが可笑しかったし、少年工の顔も恐らく可笑しかったのだろう。車内
には一寸快活な空気が出来た。その時、丸顔の若者はうしろの男を顧み、指先で自分の胃の所を叩きながら、「一寸手前ですよ」と小声で云った。
男は一寸驚いた風で、黙って少年工を見ていたが、「そうですか」と云った。
笑った仲間も少し変に思ったらしく、
「病気かな」
「酔ってるんじゃないのか」
こんなことを云っていたが、一人が、
「そうじゃないらしいよ」と云い、それで皆にも通じたらしく、急に黙ってしまった。
 地の悪い工員服の肩は破れ、裏から手拭でつぎが当ててある。後前に被った戦闘帽のひさしの下のよごれた細い首筋が淋しかった。少年工は身体をゆすらなくなった。そして、窓と入口の間にある一尺程の板張りにしきりに頬を擦りつけていた。その様子が如何にも子供ら
しく、ぼんやりした頭で板張りを誰かに仮想し、甘えているのだという風に思われた。
「オイ」前に立っていた大きな男が少年工の肩に手をかけ、「何処まで行くんだ」と訊いた。
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.154 ―――――――― 6 ―――――――――――――――


少年工は返事をしなかったが、又同じ事を云われ、
「上野へ行くんだ」と物憂さそうに答えた。
「そりゃあ、いけねぇ、あべこべに乗っちゃったよ。こりゃあ渋谷の方へ行く電車だ」
 少年工は身体を起こし、窓外を見ようとした時、重心を失い、いきなり、私に寄りかかってきた。それは不意だったが、後でどうしてそんな事をしたか、不思議に思うのだが、その時ほとんど反射的に寄りかかってきた少年工の身体を肩で突返した。これは私の気持を全く裏切った動作で、自分でも驚いたが、その寄りかかられた時の少年工の抵抗が余りに少なかった事で一層気の毒な想いをした。私の体重は今、十三貫二三百匁に減っているが、少年工のそれはそれよりもはるかに軽かった。
「東京駅でいたから、乗越して来たんだ。―― 何処から乗ったんだ」私はうしろから訊いて見た。少年工はむこうを向いたまま、
「渋谷から乗った」と云った。誰か、
「渋谷からじゃ一回りしちゃったよ」と云う者があった。
少年工は硝子に額をつけ、窓外を見ようとしたが、直ぐやめて、漸く聞きとれる低い声で、
「どうでも、かまはねえや」と云った。
少年工のこのひとり言は後まで私の心に残った。
 近くの乗客たちも、もう少年工の事には触れなかった。どうすることも出来ないと思うのだろう。私もその一人で、どうすることも出来ない気持だった。弁当でも持っていれば自身の気休めにやることも出来るが、金をやったところで、昼間でも駄目かも知れず、まして夜九時では食い物など得るあてはなかった。暗澹たる気持のまま渋谷駅で電車を降りた。
 昭和二十年十月十六日の事である。
                   (『志賀直哉全集』を現代読みに・編集室)
 
 『灰色の月』は400字詰め原稿用紙にして僅か6、7枚の作品である。エッセイのような小説とも呼べない小話である。だがしかし、日本文学全般からいうと評価はかなり高い(そうではないという人たちもいるが、私は高いと思っている。で、その評も、その観点からになります)。この作品は、数百枚の作品以上の重みや憤怒を潜ましている。時代を映している。そこに、この作品の普遍性と名作といわれる所以がある。
 たんに面白いだけの小説、昨今流行の感動もの。それらはどんなにベストセラーであっても時代の流れとともに消え去るだけ。『網走まで』や『灰色の月』は、何の変哲もない短編。だが、両作品には文学とは何かの本質がしっかり描かれている。が、それはすぐには理解、納得できないでしょう。長い、これからの人生のなかで考えていって欲しい。
 
読書週間

10月27日から読書週間がはじまります。読売新聞の世論調査では、現在読まれている本の作者・著者ランクは、このようです。1 ~ 10位まで(10・24読売)

1. 司馬遼太郎 作品は『竜馬がゆく』『坂の上の雲』など
2. 東野 圭吾 作品『容疑者Xの献身』など
3. 村上 春樹 作品『海辺のカフカ』『1Q84』など
4. 宮部みゆき 作品『理由』『模倣犯』など
5. 松本 清張 作品『0の焦点』『点と線』など
6. 西村京太郎  7.赤川次郎 8.山崎豊子  9.池波正太郎  10.藤沢周平

家族観察「にんじん」の読み この家族をどう思うか。
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社会観察・裁判員裁判初公判

初公判
 10月19日行われた裁判の初公判は、裁判員裁判制度になって、初めて死刑判決が下されるのではないかということから、注目された。
 マスメディアでは「耳かき店員ら殺害事件」として報じられている事件だが、10月26日~29日まで計4回の評議を経て11月1日に判決が言い渡される予定だという。
そこで、有権者前後にあるゼミの皆さんは、どう考えるのか、先取りして量刑を議論してもらいたい。(検事側、弁護側の双方からの所見を述べたうえで。)
 では、この事件は、どんな事件だったのか。テレビ、新聞にあった記事、ニュースから創作してみた。
事件の推移

 2009年8月3日午前8時50分ごろ、港区西新橋1丁目にある鈴木芳江さん(当時78)方にナイフを手にした一人の男が侵入した。男は、専門学校卒業後、配電設備の設計会社に勤務する林貢二(41)。一階にいた鈴木さんは、林に気づき声をあげた。林被告は、騒がれるのを恐れナイフで鈴木さんを刺殺した。つぎに林被告は2階にあがり、就寝中の、鈴木さんの孫娘、江尻美保さん(当時21)をメッタ刺しにして殺害した。母親と兄は、犯行を目撃、ショックを受ける。通報で、駆けつけた署員に逮捕される。

動機は何か(犯人林被告のみの証言)

 林被告は、女性二人の殺害の動機について、こう述べた。
 2008年2月ごろ、被害者江尻美保さん(21)が勤める耳かき店を訪れた。対応した江尻さんが「派手ではなく普通っぽかった」ので、好意を持ち通うようになった。しだいにエスカレートして同年秋には、週3,4回来店し、延長、延長で7,8時間店に居座った。江尻さんが自分に好意をもっていると思い、店外で会おうと再三誘った。が、断られた。
店側から出入りを禁止された。店のせいかどうか聞きたくて、2009年5月ごろから待ち伏せし、つきまとうようになった。そのうち、嫌われているとわかって、自分の安らぎを奪われたような気がして不安になり、江尻さんが憎らしくなった。(憎しみのあまり行動をコントロールする能力が失われ)、もう殺すしかないと思いナイフを用意して、江尻さんがいる家に向かいました。(後をつけて、調べたのです)玄関にカギはかかっていませんでした。施錠してあったら、あきらめたかも知れません。家に入って行くと、一階の部屋にお婆さんがいました。聞いていたので祖母とわかりました。老婆は、ひどく驚いて叫ぼうとした。美保さんに気づかれてはまずいとナイフで刺し殺しました。二階に行くと、まだ眠っていたので、馬乗りになって何度も刺しました。殺す気持ちでした。

初公判での林被告の心境

黒のスーツに白いワイシャツ青いネクタイで出廷。「被害者の方には取り返しのつかないことをして、本当に申し訳ございませんでした。この場を借りておわびしたいと思います」うつむいたまま、消え入りそうな声で。

被害者の遺族の心境

犯行後の林被告を目撃した母親と兄は、いまもショックから立ち直れず体調不良で出廷できず、父親のみが証言「あの日から、なにもかも変わってしまった」と述べた。

※ 被告は事件後悔、深く反省しているというが、量刑は・・・・・・・
文芸研究Ⅱ下原ゼミNo.155 ――――――――8 ――――――――――――――――

掲示板
【後期ゼミ予定】
・後期は、車内観察のテキスト読みと併せて、家族観察として『にんじん』をとりあ
げます。(「にんじん」から無意識の虐待家庭を探る)
・事件小説の裁判員裁判にも挑戦
・12月最終ゼミ、予定、合同発表出し物(疑似裁判Or紙芝居)
・1月は百人一首大会
前期提出・観察課題一覧
前期ゼミで提出された課題原稿は、以下の通りです。書くことの日常化を目指すため、後期は、より多くの観察作品を提出ください。
【観察作品】
・伊藤果南「青春老女」未発表 ・・・ 車内観察作品
・重野武尊「女装趣味の男」発表済み ・・・ 車内観察作品
・重野武尊「遠い目覚め」発表済み ・・・ 自分の一日観察作品
・重藤はるか「広いシート 狭いシート」発表済み ・・・ 車内観察作品
・竹下晃誠「府中本町~東所沢間」発表済み ・・・ 車内観察作品
・越智美和「胎児に還れる場所」発表済み ・・・ 車内観察作品
・竹下晃誠「人とは欺くある物に非ず」発表済み ・・・自分の一日観察作品
【課題・人生相談】後藤大喜、竹下晃誠、阿井大和

土壌館日誌
10月24日(日)8時40分道場を開ける。道場前に見慣れぬ自転車。放置自転車か。稽古の子供が遅い。いつも早いS少年も来ない。家庭問題か気になって家に電話する。誰もでない。幼稚園女児、小学生3人、中学生2名きたところでT師範と、教育実習の練習にと子供たちの指導をかってでた大学生のH君に後を任せて家に戻る。家人は学会参加で青砥の医師会館へ。自治会館前から10時15分のバスで、UR問題千葉・茨城総決起集会へ。
午後1時から千葉・千草台団地で決議集会。約450名が参加。ほとんどが高齢者、うち七割が女性。公団住宅に住む彼女たちは、家賃値上げ、民営化、定期借家契約を突き付けられて本当に困っている。団地住まいしたことのない議員たちにはわからない世界かも。

お知らせ
           
■ 11月13日(土)ドストエーフスキイ全作品を読む会朗読会「アサドク」『貧しき人々』
■ 12月25日(土)ドストエーフスキイ全作品を読む会第242回読書会『貧しき人々』
池袋西口・東京芸術劇場小会議室7 1000円(学生半額、下原ゼミ生0円)
※ 詳細並びに興味ある人は「下原ゼミ通信」編集室まで
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
編集室便り
☆ 課題原稿、学校で直接手渡すか、下記の郵便住所かメール先に送ってください。
 「下原ゼミ通信」編集室宛
  住所〒274-0825 船橋市前原西6-1-12-816 下原方
  メール: TEL・FAX:047-475-1582  toshihiko@shimohara.net
□ゼミの評価基準は可(60~100)とします。評価方法は、次の通りです。
  課題の提出原稿数+出席日数+ゼミ誌+α=評価(60~100)

車内観察・休講レポート(11月8日、15日)
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社会観察 休講レポート(11月8日、15日)
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一日観察 休講レポート(11月8日、15日)
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