2007年10月アーカイブ


日本大学芸術学部文芸学科     2007年(平成19年)10月29日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.89
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2007後期10/1 10/15 10/22 10/29 11/12 11/19 11/26 12/3 12/10  1/21 1/28 
  
2007年、読書と創作の旅

10・29下原ゼミ

10月 29日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室3

 1.「2007年、読書と創作の旅」)
   ・ゼミ雑誌について 原稿集めと今後の予定   
 2.「車中観察」(『灰色の月』)& 「家庭観察」(『にんじん』)
 3.名作紹介・店内観察(『殺し屋』)戦争観察(『生きている兵隊』)
 4.紙芝居稽古
  
 
速報・ゼミ誌『CoCo☆den』表紙絵候補集まる!
疋田祥子さん提供の四国写真2点
 先にゼミ誌タイトルが『CoCo☆den』(ココデン)と内定した。次に、表紙絵候補の提出が求められていたがは22日、疋田さんが自転車旅行した際、撮った四国の写真を提出した。落日と駅からの海。現在、候補は、この二点である。
最終仮作成は11月15日(木)です
ゼミ誌の仮作成は11月15日です。12月14日の提出期限厳守を目標に、頑張りましょう!
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最近のニュースに想う
 ”食欲の秋”である。が、折角のこの季節、美味しそうな食べ物を前にしても即、食欲とはいかない。「これって大丈夫だろうか」まず、こんな疑念が先に立つてしまう。これもかれも大手から老舗に到る有名会社が、嘘の表示で食材や土産物を売っていたからだ。このところのニュースは食品不審・名物不信のニュースばかりだ。インチキ食品を売ってバレたのは、いまに始まったことではないが、最近、記憶しているだけでも、こんなにある。雪印の牛乳、不二家のケーキ、ミートホープのハンバーグ、札幌石原製菓の「白い恋人」、秋田「比内鶏」の鶏肉偽装、東国原知事で有名になった宮崎の地鶏。そして、超老舗和菓子メーカー『赤福』の小細工販売。どの会社も年間売り上げが億単位の優良企業である。凡者の浅知恵というか貧者の僻みからか、ニュースを聞くたびに「なぜ、こんな大きな会社が」と疑問に思う。『赤福』では「三つ売るより一つ残すな」という社訓があったそうだ。あきれる以外にない。正直に、期限切れと明示して半額セールをやれば、すぐに完売するはず。スーパーで期限切れコーナーばかり漁る我が身にとっては、摩訶不思議な商法である。それにしても昨日、天皇、今日はコソ泥以下。相撲、ボクシング、企業、官僚、政治家。亀田一家に我が身を見て騒いでいるテレビ局。どこを見ても情けないニュースばかりだった。日本国は、見渡せば、道も誇りもなかりける、いずこも同じ秋の夕暮れである。(土壌館)


日本大学芸術学部文芸学科     2007年(平成19年)10月22日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.88
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2007後期10/1 10/15 10/22 10/29 11/12 11/19 11/26 12/3 12/10  1/21 1/28 
  
2007年、読書と創作の旅

10・22下原ゼミ

10月 22日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室3

 1.「2007年、読書と創作の旅」)
   ・ゼミ雑誌について 原稿集めと今後の予定
      
 2.「車中観察」(『正義派』)& 「店内観察」(『殺し屋』)、季節観察

 3.名作紹介・家庭観察作品(『にんじん』他、戦争観察)

 4.紙芝居稽古
  
 
速報・ゼミ誌タイトル『CoCo☆den』に内定!

 先の11月15日ゼミにて開かれたゼミ誌編集会議でゼミ誌タイトルが内定した。内定のタイトルは『CoCo☆den』(ココデン)。
 ちなみに、候補には1.ココナツアイス 2.時刻表’07 3.ビックサイト沈め!!    4.轟沈☆ 5.貧しき者共 6.ココナツトレイン 7.日本の車窓などがあったなど。

※『CoCo☆den』(ココデン)=ココナツ(アイス)電車

最終仮作成は11月16日(金)です
ゼミ誌の仮作成は11月16日です。12月14日の提出期限厳守を目標に、頑張りましょう!

先週のニュースに想う
 ”スポーツの秋”というわけでもないだろうが、先週は、スポーツに関する話題が多かった。シリーズの覇者を決めるプロ野球のステージ戦を除けば、あまりいいニュースはなかった。日大出身で元水泳五輪選手の木原光知子さん(59)の急逝には驚いた。こちらは悔やまれるが、あとは後味の悪いニュースだった。相撲、相撲ときて、こんどはボクシングである。11日のWBC世界フライ級タイトルマッチでチャンピョン内藤選手に挑戦した亀田選手が何度も反則行為を繰り返した。従来の亀田父子の逸脱した言動もあって、騒動になった。所属が協栄ジムと聞いて、あのオレンジ事件を思い出した人も少なくないだろう。亀田選手は、なぜ反則を連発したのか。採点は絶望だから、未熟、若さなどがあげられている。が、おそらく反則負けを狙ったのではないかと思う。中止の反則負けなら、いまごろは、まだ気勢をあげていたかも知れない。どちらにせよ本当に嫌なニュースばかりだった。 (土壌館)


日本大学芸術学部文芸学科     2007年(平成19年)10月15日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.87
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2007後期10/1 10/15 10/22 10/29 11/12 11/19 11/26 12/3 12/10  1/21 1/28 
  
2007年、読書と創作の旅

10・15下原ゼミ

10月 15日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室3

 1.「2007年、読書と創作の旅」)
   ・ゼミ雑誌について 原稿集めと今後の予定
      
 2.「車中観察」(『正義派』)

 3.名作紹介・家庭観察作品(『にんじん』他戦争観察もの)

 4.紙芝居稽古
  
 
最近のニュースから
 マスメディアにとって今年は、大相撲と政治は当たり年のようだ。特に大相撲は、ニュースは寝て待て、といわんばかりだ。朝青龍の横綱品格騒ぎがようやく治まってきたと思ったら、こんどは相撲部屋でのしごき殺人疑惑である。これまで報道されたことをまとめると、事件の推移は、凡そこのようである。今年4月に入門した17歳の少年が、6月に3度目の脱走を図り、相撲言葉で言う「かわいがり」の結果、外傷性ショックで亡くなった。「かわいがり」とは、どんなものか。今日までにわかっているのは、親方にビール瓶で額を殴られたあと親方の支持で、兄弟子たちが金属バットでたたいた。そのあと、通常10分のぶつかり稽古を30分つづけた。少年が倒れてから20分程様子をみてから救急車が呼ばれた。が、病院で死亡を確認。医師は急性心不全と診断した。(これまでも、死亡した力士の死亡原因は、この診断名が多いという)。この事件が明るみにでたのは、部屋で火葬にしたいという親方の申し出に疑問を感じた両親が、遺体を故郷の新潟に搬送してもらったことにある。遺体には、体じゅうに傷があった。両親は、異変を感じ死体解剖してもらった。ここでの診断は、体じゅうの傷が原因でのショック死だった。先の朝青龍の品格問題は、(仮病届けして、母国で子供たちと楽しそうにサッカーボールを追う横綱。怒りを顕にした相撲協会や横綱審議委員会の人たちに)苦笑できるが、ショック死となれば深刻な事態である。もっとも、相撲世界にとっては、それほどたいしたことではないようだ。応対の鈍さが証明している。「しごき」は、かつて戦前は日本軍部、戦後は大学運動部の暗部だった。N大ワンダーホーゲル部のシゴキ殺人、T大空手部の退部稽古殺人を思い出す。それにしても、一つの謎がある。こんな時代錯誤の封建的世界において外国人力士の台頭はなぜか?!


日本大学芸術学部文芸学科     2007年(平成19年)10月 1日発行

文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信No.86
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
2007後期10/1 10/15 10/22 10/29 11/12 11/19 11/26 12/3 12/10  1/21 1/28 
  
2007年、読書と創作の旅

10・1下原ゼミ

10月 1日(月)の下原ゼミは、下記の要領で行います。文ゼミ教室3

 1.「2007年、読書と創作の旅」)
   ・後期の旅ついて (名作)見どころなど
   ・ゼミ誌編集について 編集委員からの確認
   ・ゼミ合宿「時空体験ツアー」感想補足
   
 2.「家庭観察」(最近の家庭内事件記事を読んで「自分の見方」)

 3.名作紹介・観察作品

 4.紙芝居稽古
  
 
最近のニュース
 とにかく今年の夏は、暑かった。更新に次ぐ更新の記録的猛暑。強力台風。この自然界の猛攻に加え、世相は連日、朝青龍の横綱品格問題と混迷政治の話題。とにかくうんざりする出来事ばかりの2007年の夏だった。そんななかで背筋が寒くなるのは、相次ぐ父親を狙った子どもの殺人・殺人未遂である。やっと涼しくなったとほっとしていた矢先の9月18日未明、その事件は起きた。京都府にある消防署に通報があった。「主人が(自分)で首を切った」すぐ来て欲しい。が、主人は既に死んでいた。首右側の付け根部分を数回切られ、最も大きな傷は24㌢、深さは首の骨の中央まで達していた。死因は出血死、死亡推定時刻は同日午前4時頃。他殺である。通報したのは、その家の主婦(41)、殺されたのは、その家の主人で警察官(45)。その家は、他に短大生の長女(19)、専門学校生の二女(16)の4人家族。まもなく、二女の犯行と分かった。凶器の斧は、5日前、近くのホームセンターで買ったもの。計画的な殺人である。なぜ少女は、父親を殺したのか。この謎が解けぬうち9月24日未明、またしても同様の事件が起きた。長野県の岡谷署に110番通報が入った。「子どもが夫を傷つけた」。署員が駆けつけると、その家の主人が頭から血を流して倒れていた。傷は最長で二十数㌢、深さは骨に達する傷数ヶ所。が、命に別条はない。知らせたのは母親、重傷を負ったのは父親(44)。その家は、長女、長男、二男、三男の6人家族。犯人は中学3年生の次男(15)だった。凶器は、京都の専門学校生と同じ斧。9月26日現在までだが、動機は「父親の女性関係が許せない」。一見、普通に、幸福そうに見える家族。だが、その内には様々な問題がある。志賀直哉の作品には家庭の問題を扱った作品が多い。が、後期ゼミでは、同じく家族問題を描いた『にんじん』をとりあげる。

下原ゼミ通信 号外

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日本大学芸術学部文芸学科     2007年(平成19年)8月 4日発行
号外!文芸研究Ⅱ下原ゼミ通信
BUNGEIKENKYU Ⅱ SHIMOHARAZEMI TSUSHIN
                              編集発行人 下原敏彦
                              
 
軽井沢、ゼミ合宿(マラソン読書)

8月4日の軽井沢でのゼミ合宿における下原ゼミ課外授業は、下記の要領で行います。

 1. はじめに・・・・・読書は格闘技、準備体操が必要です。(自彊術&気功)

2. テキスト・・・・・ドストエフスキー『貧しき人々』江川卓訳
 

暑中お見舞い申し上げます!

前期を終えて
 今年の前期は、はしか騒動もあり、なんとなく慌しく過ぎてしまったような気がします。そんなわけで最終授業では、ゼミ反省もできませんでした。が、ゼミ全体感想は、登録者が一人も欠けることなく、協力し合って楽しく仲良くできたことをうれしく思います。
 下原ゼミの目標は、読むことと書くことの習慣化により観察力と表現力を身につけることでした。テキスト読みと観察発表において、その目標に近づくことができたでしょうか。
 読書については、テキスト4作、名作5作(詩篇も)、書くことについては、18本の発表作品がありました。数のうえからですが、ほぼ計画通りに進んだかと思われます。継続は力なり。後期も、ひきつづき読むことと書くことの習慣化を目指します。
 
7月の不祥事ニュースに想う
 7月は、不祥事が目立った。閣僚たちの相次ぐ失言があった。大きな不祥事は、やはり赤城農林水産大臣の事務所費問題や絆創膏の謎騒動だろう。結局、このことが原因で7月29日の参議院選挙は、自民党の歴史的大敗に終わった。この赤城氏については、8月1日、真相は不明ながらついに「更迭?」になった。政治家の不祥事は、いつの世も尽きることがない。これに並ぶ大不祥事として大相撲の横綱朝青龍(26)の仮病疑惑があった。先の名古屋場所で優勝した朝青龍だが、ケガを理由に夏巡業を休むことになった。治療に専念していると思いや、帰国して、モンゴルで、子供たちとサッカーを楽しんでいた。軽快にボールを追う姿が放映された。怒った日本相撲協会は、2場所出場停止と4ヶ月30㌫の減給という厳しい処分を決めた。この騒動の最中、アイススケートで人気の織田選手(20)が、ゼミ打ち上げの宴席でビールを飲み、ミニバイクに乗り、道路交通法違反容疑で交通切符を交付された。一緒に飲んだ教授たちは、バイクで来たことを知らなかったという。こちらも12月までの出場停止処分が出された。むろんこれらの不祥事は、悪いことことだが、ニュースを聞いていて釈然としないものを感じる。それは何故か。29日参院選挙、混戦の東京で新人の女子アナが当選したことにある。この人は何と、自分に選挙権がないことも知らず、春の都知事選はおろかあの日本中が大騒ぎした郵政選挙にも行かなかったという。これこそ大不祥事である。が、メディアも政治家も不問に伏せた。これ以上の不祥事はない。
ゼミ合宿のテキストについて

なぜ、この作家の、この作品か。

なぜドストエフスキーか

 「2007年、読書と創作の旅」では、旅の最終目標の一つに観察力をあげています。テキストに小説の神様・志賀直哉の車中作品をとりあげ、作品読みと自分たちの車内観察作品発表を行ってきました。が、観察力がとくに優れている作家といえばドストエフスキーです。「人間は、謎です。謎は解かなければなりません」18歳のときに手紙に書いている。この作家の言葉は、あまりにも有名です。それ故、これまで世界の賢人たちは、なにかにつけてドストエフスキーを読むことをすすめてきた。日芸の清水正教授も、先般出版した『ウラ読みドストエフスキー』の冒頭に「ドストエフスキーを読まずして人類の運命を語ることなかれ」と記している。ならば、是が非でも挑戦してみなくてはならないだろう。だがしかし、ドストエフスキーの作品は、安易に登れる山ではない。清水教授は、それについてこのように解説している。
 
 ドストエフスキーの文学はやたらに長い、やたらに暗いという先入観にとらわれて、今まで一度も彼の作品を読んだことのない人も多いと思う。しかし、今やそんなことを呑気に言っている場合ではない。ドストエフスキーはノストラダムスと並ぶ、否、それ以上の大予言者である。嘘だと思ったら、さっそく彼の作品を読んでみたらいい。ソヴェト崩壊などは、すでに百年以上も前に書いた『悪霊』という小説の中で、ものの見事にと言おうか、的確にその行く末が見抜かれていたのである。(『ウラ読みドストエフスキー』)

ここでは、社会体制やイデオロギーに対する予言の書として『悪霊』が紹介されている。が、ドストエフスキーの作品は、パソコンやケイタイ時代さえ予言していた。

時代を先取りしたケイタイ・メール小説

 合宿ゼミで挑戦する『貧しき人々』は、現在ならメール交換。ケイタイ小説である。100年以上も前にドストエフスキーは、すでに書いていたわけである。(1845年)
 この作品は、当時のロシア文壇関係者に大きな衝撃を与えた。このことは、「ゼミ通信」に再三、掲載したが、今一度、当時の大批評家ベリンスキーの評価を紹介しよう。

 「急いで来たまえ、ニュースがあるんだよ」と大きな声で言った。・・・・「これで二日間、この原稿から離れられないってわけさ。これは、新人の小説なんだがね。その男がどんな見てくれをしているのやら、どの程度のことを考えているのやら、まだ知らないんだけれど、小説は、この男以前には誰一人思いも及ばなかったような、ロシアの生活とさまざまな人間の性格の秘密をあばいたものだ。これはわが国で初めての社会的小説の試みだ。そしてその試みを実行する者自身は、自分のやっていることがどういうことなのか気づいてもいない。この試みは、そういう、芸術家がいつもやるやり方でなされたのだよ。
P・V・アンネンコフ『文学的回想』

現在では、メールや、ケイタイ小説を見ても驚きはしないが、当時の人間にとっては、驚愕すべきことだったのだ。その様子が、よく現れている。

アンネンコフ(1813-1887)ロシアの批評家。西欧派の一人。フランス空想的社会主義をロシアに紹介した。ゴーゴリ、ベリンスキー、ゲルッイン等と親交があり、K・マルクスとも文通した。